“今月の”優先順位高めです 【2021年4月号】

2021.04.01

演劇大好き人たちの、優先順位高め”な公演を、ゆるっとご紹介いたします。

演劇ジャーナリスト・徳永京子の優先順位高め!

公演情報を知った時、心拍数が一気に上がった。まさかこのふたりがあの役でまた観られるとは。四世鶴屋南北の『桜姫東文章』に、片岡仁左衛門と坂東玉三郎。歌舞伎の歴史屈指の名コンビによる当たり役を、36年ぶりに復活するという。
年月をありがたがるつもりはないし、押入れの奥から引っ張り出してきたようなカビ臭い上演になりそうならスルーするが、驚くことにこのふたり、ともに70代になりながら、近年またさらに充実してきている。常人には想像し難い努力と向上心で、驚異的に充実期を永らえているのだ。高い技術と作品への深い分析力を併せ持ち、それをこまやかに表現する技術と美しさ、さらに色気を湛えている俳優が息を合わせる。彼らと同じ時代に生きている幸運には、感謝してもしきれない。
『桜姫東文章』は、四世鶴屋南北ならではの、あれもこれもと欲張って取り込んだ大胆な展開が、破綻ではなく破天荒になっている怪&快作。仁左衛門は、手当り次第に悪事を働くのに憎めない釣鐘権助と男色の僧・清玄の2役を演じ、玉三郎は、高貴な生まれから堕ちていくも、それと反比例して輝きが増していくヒロイン・桜姫を演じる。役の年齢を考えれば、どちらもこれが最後と覚悟しての出演だろう。今、歌舞伎座はコロナの感染対策で一部の上演時間を短くしているので「上の巻」のみだが、それでも観る価値大。
なので、ハードルが低くないことは承知の上で声を大にして言いたい。「4月は、万難を排して歌舞伎座の第三部を観よ」と。
ほぼ1ヵ月やっているのでステージ数は多く、3階後方なら3000円で観られる。もちろん奮発して高い席で観ても後悔はきっと生まれない。ただ、ソーシャルディスタンスの関係でチケットの販売枚数は通常より少ないと思われ、大変なチケット争奪戦が予想される。状況が変わる可能性もあるので、事前に調べるなどして万全を期して臨んでほしい。成功を祈る。

徳永京子
ひとつの作品についてだらだら考えるのは悪くないと最近は思っていて、上演期間が終わった公演でも感想をつぶやくことに前向きです。
Twitter:@k_tokunaga

ライター・横川良明の優先順位高め!

ゴジゲン『朱春』
劇団スポーツ『ルースター』
くだらなくて、やるせなくて、いとおしい。そういう人間臭さにグッと来る人たちにオススメしたいのがゴジゲンと劇団スポーツ。どちらも男ばかりの劇団で、面白いことが好きというのが共通点。ゴジゲンは相変わらず劇団員だけで男たちの芝居をやるようです。タイトルから想像するに、若者からおっさんへ移り変わる男たちの友情やドラマを見せてくれそう。劇団スポーツは、大学の卒業旅行の夜に仲間の焼死体が発見されるという、サスペンスなあらすじ。でも、きっとその斜め上をいくものになるだろうと期待しています

横川良明
ライター。演劇・映像を問わず幅広く取材。演劇集団キャラメルボックスと惑星ピスタチオに魅せられて演劇の世界へ。観る人に情熱と希望を与えてくれるようなお芝居が好きです。
Twitter:@fudge_2002

ライター・河野桃子の優先順位高め!

ミュージカル『スリル・ミー』 と『モーツァルト!』が再演!人気作の再演は 興奮が止まりません……。再演といえば、野田秀樹さんの『パンドラの鐘』とケラリーノ・サンドロヴィッチさんの『カメレオンズ・リップ』が、魅力的なキャストと新演出家でどんな舞台になるのか楽しみです!
新作ではTEAM NACS『マスターピース~傑作を君に~』のほか、すでに京都公演の評判が良いドキュメンタリー演劇『私がこれまでに体験したセックスのすべて』はダイバーシティ企画としてもバリアフリー上演としても気になります。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

ライター・古内かほの優先順位高め!

山崎育三郎さんと古川雄大さんがタイトルロールを務める『モーツァルト!』が3年ぶりに上演。昨年の朝ドラ『エール』でバッチバチのライバル同士の歌手を演じた2人(キャラ立ちすごかった…)の更なる進化に期待が高まります。
梅田芸術劇場×チャリングクロス劇場の共同プロデュース『消えちゃう病とタイムバンカー The Vanishing Girl &The Time Banker』は、歌舞伎界を担う坂東巳之助さんと日本の映画界でも活躍目覚ましいシム・ウンギョンさんの共演とあって見逃せない一作。
My friend Jekyll 2021』は朗読xダンスx生演奏の化学反応がたのしみです。
宝塚では8年ぶりの上演になる『ロミオとジュリエット』は、少年・少女性の高い星組トップコンビ、礼真琴さんと舞空瞳さんにぴったりの演目。キレッキレと評判のデュエットダンスが早く観たい…!

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。
今年はダンス公演も積極的に観に行きたいです!
Twitter:@kahonfuu

ライター・中川實穗の優先順位高め!

どんな作品になるのかを楽しみにしているのは、ゴジゲン第17回公演「朱春」です。赤堀雅秋さんの新作M&Oplaysプロデュース「白昼夢」には抉られそうでうずうずしますし、毎回感情の濃厚接触がすごいゴツプロ!の第六回公演「向こうの果て」も楽しみ。最近は映画『花束みたいな恋をした』で改めて坂元裕二脚本に浸りたくなっているので、坂元裕二 朗読劇2021「忘れえぬ 忘れえぬ」、「初恋」と「不倫」も気になります。そして、わたしにいろんなことを教えてくれた演劇「ハイキュー!!」が遂にラストなので、ドキドキしながら劇場に行き、呆然としながら帰ります。

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

4月はふたつのアニバーサリー作品にときめいてます。日本初演から四半世紀。歴代キャストが大集結。豪華すぎて観客の理解をも超えてきた奇跡の組合せも誕生する『エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』。たとえ観れなくても気持ちが上がる“ハレの日”感!そして、日本初演から10年。初演キャストも復活する『スリル・ミー』は三組全組観劇予定!

岩村美佳
フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
Twitter:@nyanyaseri

ライター・釣木文恵の優先順位高め!

いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」が新キャストで上演。ロロのマスターピースである今作を、作・演出の三浦直之さんは「かつてのように肯定することができません」とのこと。いまこの作品にどう向き合うのか、見届けたいです。『シブヤデアイマショウ』シアターコクーン芸術監督就任会見でもショーを披露した松尾スズキさん、どんなエンターテイメントショーを見せてくれるでしょう。コーナー演出、杉原邦生&康本雅子&宮崎吐夢って!

釣木文恵
演劇を中心にインタビュー記事などを執筆。最近はお笑い関連の仕事も増えてきました。

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

やはり芝居は生で観たい!4月、優先順位が高いのは、俳優2名ピアノ1台のミュージカル、できれば全ペアを観比べたい『スリル・ミー』、野田さんの作品を熊林さんがどう演出するのかが楽しみな『パンドラの鐘』、大好きなKERAさんのシリーズ、KERA CROSS『カメレオンズ・リップ』。いずれも過去に上演された作品。これらが出演者や演出など形を変えながら、上演され続ける事が舞台の魅力とも言えるかなと。まだまだ観たいのいっぱいあります。可能な限り劇場で皆さんの熱量を感じられたらいいなと思ってます。

ローチケ演劇部_たの優先順位高め!

まずはTEAM NACS第17回公演『マスターピース~傑作を君に~』の開幕!お待ちしておりました!インスタでも書いたんですが『悪童』(2015年)が大好きでして、今回も同じくマギーさんの演出。5人の男たちのどんな挑戦が観られるのか、ひたすら楽しみです(マギーさんいわく、TEAM NACSは「ジョビジョバの公式いとこ」)。そして日本初演から10年の『スリル・ミー』も忘れるわけにはいきません。出演者2人とピアニスト1人。舞台上には3人しかいないミュージカルですが、違うペアを観ればもちろんのこと、同じペアでも観るたびに”違う”んです。ストーリーも、歌っている曲も同じなのに。同じ舞台は二度とないことをこれでもかと思い知らされる作品のひとつだと思ってます。さらに、春といえば桜の季節ですが、四月大歌舞伎の『桜姫東文章』のほかにもこの4月に咲く桜がもうひとつ。シネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』4/7にBlu-ray&DVD発売!作品を観る前と後とでは、満開の桜を見上げる気分が変わります。よろしければ、ぜひ。

ローチケ演劇部_塩の優先順位高め!

私がオススメするのは、『フラガール-dance for smile-』。2019年に上演された際に観劇したのですが、大人になってからこんなに泣いたのは久々…と感じるほどの大号泣。少女たちが奮闘しながらも自分の人生を必死に生き抜く様子は、今の世の中だからこそ心に響くものがあるのではないかと思います。そしてもう1つ気になっているのが、個人的に注目している『熱海殺人事件』『いとしの儚』と今年に入ってから立て続けに観劇した作品で演技に魅了された荒井敦史さんや、昨年梅棒へ加入した多和田任益さんが出演するFICTIONAL STAGE『亡国のワルツ』。作・演出は少年社中の毛利亘宏さんが務めるとのことで、こちらもどんな作品になるのか今からとても楽しみです!