堤幸彦の演出による豪華絢爛、奇想天外なエンターテインメント時代劇「魔界転生」が再演されることになった。2018年の初演では10万人を超える動員を記録し、大ヒット。キャストには、上川隆也をはじめ、小池徹平、藤原紀香、浅野ゆう子、松平健といった豪華な面々が揃えられた。原作にはない役どころながら、物語を大きく動かしていく存在・お品を演じる藤原は、どのように本作に臨むのだろうか。話を聞いた。
――まずはご出演が決まってどういうお気持ちでしたか
「魔界転生」という作品は、これまでいろいろな形でリメイクされている名作。この作品を堤さん率いるこのチームが3年前、全く新しくパワフルなものに蘇らせました。この素晴らしい舞台に参加できるのはとても嬉しいことです。
――初演をご覧になられたとのことですが、どういうところに感動がありましたか
上川隆也さんや松平健さんをはじめとする素晴らしい男性陣の殺陣アクションのシーンはもちろんのこと、登場人物たちの人間ドラマに胸を打たれました。私がつとめさせていただく役〝お品〟と淀君の場面はとても重要な場面になるので今からとても楽しみです。
――製作陣からは、お品という役についてどんな風にお聞きになっていますか。
実際に、堤監督やマキノ先生が天草や原城に行かれ、いろいろな方と会い歴史のことなどお調べになったと聞いています。その土地、歴史の匂いを肌で感じこの脚本が作られたのだと。
〝お品〟は原作には出てきませんが、天草四郎に姉がいたのではないか、もしいたとしたら…と想いを馳せこの役を作られたと聞きました。俳優も同じく、歴史上の人物を演じる際はお墓参りをしたり、その土地に行き何かを感じとる作業を行います。制作陣も同じ思いで作品に向かい、そしてお品という役を作ってくれたのだと思うと身が引き締まる思いです。
――まだ稽古前ですが、お品という役どころについては、今の時点ではどう考えていらっしゃいますか。
愛がとても深く、慈しみと強さを備えた女性なんだと思います。背負っているものの大きさには驚きますが、とてつもない覚悟を持って生きている女性なので心して稽古に臨みたいと思います。
天草四郎が怨みを持って魔界に転生してしまったというのは、天草の乱で犠牲になった民のこと思えば、姉の立場としても分かります。しかし命を懸けて彼の道を正そうとするお品の想いが、誇り高く清らかで 脚本を読んでいても涙がでました。
――ちなみに天草四郎を演じる小池さんは、藤原さんを「のり姉」と呼ぶほどの仲とお聞きしました。
ポスター撮影の際、久々に徹平さんに会いました。その姿は、まさしく天草四郎そのものでした。思わず「四郎!」と、声を上げてしまいました。ファンの皆さんは、徹平さんの天草四郎姿に惚れ惚れすること間違いなしです。
彼のデビュー当時の作品(あなたの人生お運びします)で、家族のような間柄を演じていて、その後、消防士を描いたドラマ『ボーダーライン』という濃い作品を共に経験したので、本当に身内のような存在に感じています。ですので、今回の役はより入ってくる感じがありますね。
家族もできてまた新たな徹平さんとお芝居ができること楽しみにしています。
――主演の上川隆也さんをはじめ、ほかの共演者の印象はいかがですか
上川さんとは今回が初対面となります。普段から作品を見せていただいて、舞台、ドラマ、映画、それぞれにお芝居の幅が広く魅力的な素晴らしい役者さんですのでご一緒できること嬉しいです。
そしてサザエさん以来(松平)健さまにお会いでき、今回は殺陣を見られることも楽しみです。そして、浅野ゆう子さんは同じ兵庫県出身のモデルからの先輩でもあるので、初共演させていただけること楽しみです。
馬木也さんや野添さんにも再会できますし、皆さんとの稽古、 とても楽しみにしています。
――演出の堤幸彦さんについてはどんなイメージをお持ちですか
作品はいろいろ拝見していて、ご一緒させていただきたいと願っておりました。舞台『魔界転生』でもそうですが、ところどころ面白い演出が入ってきますよね。あのあたりは稽古ではどんなかんじで作っているのだろう、など楽しみにしています。柔軟性を持って稽古に臨みたいと思います。
――もうすぐ稽古開始ですね
今回は先輩方やフレッシュな俳優陣も揃っていますから、各世代の皆さんと共にお芝居を積み上げていけるのがとても楽しみです。コロナ禍の制限がある中ですがチームで乗り切って行きたいと思います。
――今回は地方公演も予定されています。
ミュージカル「南太平洋」という作品でも全国津々浦々まわらせていただきましたが、その土地ごとのお客様の反応が嬉しくて。舞台を楽しみに待って来てくださる皆様のおそばに行けるのは嬉しいですね。
人に気軽に会うことが難しくなった今、劇場へ舞台を楽しみにいらしてくださるお客さんと舞台役者の空間ならではの、気の交流ができることが幸せですし、いらしていただいたお客様にこの「魔界転生」が作り出すエネルギーを届けられたらいいなと思います。
――舞台に臨むために、オフのときの過ごし方で気を付けていることは?
とにかく健康でいてみんなに迷惑がかからないようにしなければと。免疫を上げ病にかからぬように気力体力共に高めておきたいと思います。旬のものを取り入れて、栄養バランスを考えた食事作りを心がけています。
――舞台の魅力ってどういうところにあると思いますか。
どんなに世知辛い大変なご時世でも、その時間だけでも忘れさせてくれる。それが劇場なのだと思います。
自身もそうですが、いい作品を見て劇場を出ると、活力が湧いてきて美味しいものを食べたくなったり、朗らかな気持ちでいられたり。普段の日常では経験できないような泣いたり、笑ったり、考えさせられたり……感情が揺り動かされてこころの琴線が敏感になれて生きてることを実感できたり。そういうことって大切だなあと。けっして不要不急ではないと思うんです。舞台はダイレクトにお客さまとエナジーをシェアできるし、元気になってもらえるんじゃないかと思います。こういう現状だからこそ、特にそう思います。
――舞台からもらえる活力って、ほかに代えがたいものですよね。
本当にそう思います。昨年8月に5ヶ月ぶりに歌舞伎の公演が再開されました。こんなご時世の中、お客様は来てくれるだろうかと皆不安でした。開演すると、静かに座られているソーシャルディスタンスの客席のお客様から、待ってました!と言わんばかりに拍手が鳴り止まず、私も一番後ろで観ていたのですが、その雰囲気に自然に涙が出てきて。。。
観劇後、劇場から出てこられたお客様が「待ってたのよ。観に来てよかった、本当に」とおっしゃってくださるお客さまが多くて。元気がもらえた、久しぶりに心から笑えた、ワクワクした、やっぱり生の舞台っていいよね、などなど生の声をいただけて。
そう。舞台は不要不急じゃない。待っていてくれるお客様がいる限り、私たちもコロナに負けず、稽古に励もうと思います。
――「魔界転生」をはじめ、2021年も公私共にご活躍されることと思いますが、今後はどのように活動していきたいですか
こんな中でもやれることを少しずつでも継続し届けていこうと。歌、声優など声を使う分野もまた再開したいと思います。そして、俳優業だけでなく、ずっと続けてきたライフワークであるボランティア活動も同じく。
これまで全国各地を周り世界の子どもたちのことを伝えてきたチャリティ講演会が19年目になるのですが、時代に合わせ今回初めて!オンライン配信で全国の方に聞いてもらえることになりました。これまで活動してきたアフガニスタンやカンボジア、東ティモール、ネパールでのことや、自身のNPOスマイルプリーズ世界子ども基金で建てた学校のこと、赤十字広報特使、JICAの活動など経験を通して感じたことを皆さんにシェアできる機会となりますので嬉しくて。
人にエネルギーを与えられる職業だからこそ、一歩ずつですが、できることを継続していくことが大切だねと、周りとよく話をしています。
まだまだ厳しい状況は続くかもしれないですが、公私共に 一期一会を大切にして生きていきたいと思います。
取材・文/宮崎新之