“今月の”優先順位高めです 【2021年9月号】

2021.09.01

優先順位高め

今年も2/3が終わっちゃいました。早いですね。振り返ると、なんだかずっと何かしらの規制がかかっていて、どうしても下を向きがちになっちゃいますが、こんな時こそ舞台を観て元気をもらいたいですね。というわけで、「今月の優先順位高めです」です。
※公演の上演状況、日々刻々と変わっております。ご来場前に上演可否のご確認をお願いいたします。

俳優・山岸門人の優先順位高め!

山岸門人

暑さ…続きますね。他にも色々、続いて欲しくないのが続いちゃって、なんだかなぁという日々ですが、今月も張り切って舞台チェック!
私の尊敬する先輩方の舞台が有りますねえ。山内圭哉さん、福田転球さんの「2CHEAT5」@駅前劇場。前作が観れなかったんですが、観た知人達から抱腹絶倒の舞台だったと。
このお二人の会話、楽屋や酒場で聞いていると、面白すぎてお金を払いたくなる衝動に駆られるんですが、それが舞台でたっぷりと堪能できるという。とってもとっても楽しみです。
小松台東「デンギョー!再演」@ザ・スズナリも気になりますねえ。松本哲也さんの描く人間、好きです。
僕が出演する、ロックオペラ「ザ・パンデモニアム・ロック・ショー」も18日に開幕です!現在、鋭意稽古中。フレッシュで斬新でどこか懐かしく、そして超ロックな作品に仕上がるんじゃないかと。9月も頑張って踏ん張って行きましょう!

山岸門人
俳優。私が出演する舞台、ロック☆オペラ『ザ・パンデモニアム・ロック・ショー』のチケット(東京公演)が発売中です。是非に。あと、LINEスタンプ発売中です。
Twitter:@yamagishimondo

 

俳優・田代明の優先順位高め!

田代明

9月に私がお勧めするのは、「検察側の証人」。私がこの作品と出会ったのは、大学時代。演劇をやっていた他大学の先輩が学内で演じられていました。芝居のしの字も知らなかった私にとって、怒涛の展開、検事マイアーズを始めとした長台詞のオンパレード、会話の応酬に、圧倒された事を覚えています。それと、劇団時間制作プロデュース公演第二弾「舞台 ヒミズ」も絶対。時間制作さん×ヒミズだなんて、人間がめちゃくちゃ人間してる所を目の当たりにしてしまうんだろうなぁ…ワクワクです。

田代明
女優。秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」劇団員。東京藝術大学声楽科卒業。「お芝居の素敵なミュージカル女優さん」と言われる為に、日々いろんな作品を勉強中。そしてシンプルな観劇オタク。
Twitter:@Akari4_50

 

ライター・横川良明の優先順位高め!

横川良明
シスカンパニー公演『友達』
安部公房の戯曲の面白さはすでに多くの人の知るところ。その上で、普段は自ら書き下ろした戯曲に演出をつけることが多い加藤拓也が、他者の書いたホンをどう乗りこなすのか。そこに注目したいと思います。出演陣は説明不要な豪華な顔ぶれ。ねっとりとした演劇体験を味わわせてほしいです。

KAKUTA第30回公演『或る、ノライヌ』
新作が発表される限り、万難を排して駆けつけたい劇団のひとつが、KAKUTAです。作・演出の桑原裕子の人間を見る目が好きです。KAKUTAの作品には、傷を負った人たちがたくさん登場します。悲しい過去や事件もあったりします。それでも最後にわずかな希望が見えるところがいい。しかも、それが押し付けでも綺麗事でもないところに安心を覚えます。さて、今回はどんな作品を見せてくれるのでしょうか。

横川良明
ライター。演劇・映像を問わず幅広く取材。演劇集団キャラメルボックスと惑星ピスタチオに魅せられて演劇の世界へ。観る人に情熱と希望を与えてくれるようなお芝居が好きです。
Twitter:@fudge_2002

 

ライター・河野桃子の優先順位高め!

河野桃子
いま、新たに舞台をつくることについて。モダンスイマーズの蓬莱竜太さんにたずねると「今こそ精神の肥料が必要ですから」という言葉が返ってきて、観る人にとっても創る人にとってもそうだよなと思いました。去年にまして乾きと渇望が大きくなっていると感じる日々。そんななかで、いやそんななかだからこそ、新たに立ち上がった蓬莱さんによる個人ユニット「アンカル」による『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』(東京芸術劇場)。卒業から約10年後にクラスメイト達が振り返る、ある中学での1年間を描く群像劇です。「演劇を目指す人達が“劇場”で出会う場に」と、20代を対象にしたオーディションには500人以上の応募がありました。すでにテレビなどで活躍される俳優から、初舞台のメンバーまで27名が揃います。「きっとこの時期に作品を共にできた人は、戦友ですよ」との蓬莱さんの言葉がじっとりと残りました。

一方、経験も実力も豊かな豪華キャストを集めたシス・カンパニー『友達』(新国立劇場)。安部公房の書いた、謎の9人家族をめぐる“摩訶不思議な世界”を、劇団た組の加藤拓也さんが演出します。また、ワタナベエンターテインメントDiverse Theater『物理学者たち』(本多劇場)は、サナトリウムで起きた殺人事件をめぐる物語。スイスの劇作家フリードリヒ・デュレンマットにより書かれたのは、核戦争の脅威がせまる冷戦下の1961年。福島原発事故が起きた日本で、そして今の脅威であるコロナ禍において、「物理学者とは」と、演劇という創造と想像力によって問いかける作品だと期待したいです。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

 

ライター・中川實穗の優先順位高め!

中川實穗
今すごく楽しみにしているのは、シス・カンパニー公演『友達』。加藤拓也さんの演出作品は大好きで、わたしは前情報を入れずに劇場に行き、観劇中にショックを受けまくり、大満足して帰る、というのがルーティンです。だから今作もあらすじ、キャスト、ほぼノーチェック。しかし楽しめることは確信しています。早く観たいと思っているのは、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』。長塚圭史さんが演出し、スチャダラパーが音楽を手掛け、田中哲司さん、松田龍平さん、笹本玲奈さん、石橋静河さんが出演し、恋い焦がれる人と共にいるために心中を選ぶ二組を描く……ってそりゃ早く観たいでしょう!?!? なぜか観る前からちょっと満足しています(どういう気持ち)。取材をさせてもらう中で気になっているのはミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』。韓国版とはまた違い、白井晃さんならではの、心情が丁寧に描かれたものになっているそうで、自分が誰に共感するのか、共感しないのか、なにかを思い出すのか、非日常にストレス発散するのか、恐れるのか、悲しむのか、切なくなるのか、全く予想がついてなくて楽しみです。最近は、直近の観劇予定めがけて粛々と日常を送っているので、劇場が小さなゴールのようです。

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

 

ライター・古内かほの優先順位高め!

古内かほ
9月の公演では、韓国発のミュージカル作品が気になっています。
まず、キャストインタビューもさせていただいた『ジャック・ザ・リッパー』。ミステリーなので物語の展開もたのしみですし、ドラマティックなナンバーが詰まっているところにも魅力を感じます。大好きな日生劇場で、というのもうれしい。日本版初演ということもあり、ぜひ観ておきたいなと思います。
もう一作は、ミュージカル『DEVIL』日本プレビューコンサート。作品の全貌についてはまだあまり情報に触れられていないので、ヴェールに包まれている状態ですが、韓国で生まれたロックミュージックのコンサート版ということで、中川晃教さんをはじめとする実力派キャストの皆様がどんな世界を見せてくださるのか、そして今後本編の上演の可能性もあるのかしら?と今から期待が膨らみます。
8月は中止になる公演が多くありました。舞台に携わる方々の徹底した感染対策をもってしても、難しい局面に来ているのだと感じます。このテキストを書いている今も、正直複雑な思いがありますが、興行に関わる皆様、観客の皆様の安全を祈りながら、状況の変化にアンテナを張りつつ過ごしたいと思います。

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はダンス公演も積極的に観に行きたいです!
Twitter:@kahonfuu

 

ライター・大内弓子の優先順位高め!

大内弓子

10年前に新国立劇場で上演されたときには観ることが叶わなかった井上ひさしの『雨』。こまつ座でも19年ぶりの上演となるというのだから見逃したくない一作だ。騙すつもりで東北に乗り込んだ江戸の金物拾いの男が騙されて……と、どんでん返しが待ち受ける、傑作と名高い井上戯曲。物語に翻弄される喜びを味わい、人間の怖さや面白さをたっぷり浴びたいと思う。同じく井上戯曲で蜷川幸雄が演出した『ムサシ』が、吉田鋼太郎演出で再演されるのも楽しみだ。思いが引き継がれつつ、また新たに立ち上がる。そんな演劇を観ることで、どこか刹那的に感じられる今が、ちゃんと過去と未来につながっていると確認できる気がする。そしてあとは、山内圭哉と福田転球のユニットによる『2Cheat5』で、何も考えずにひたすら笑いたい!


大内弓子
演劇を中心に、ドラマ・映画などエンターテインメントの、主にインタビュー記事を執筆しています。

 

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

白
初日延期、急遽の公演中止など、悲しいニュースが日々飛び込んできます。いろんな方々の思いの詰まった公演を観られる事って、スペシャルな事なんだと改めて気付かされる今日この頃。9月の優先順位高めな作品は、個人的に注目しまくってる劇団た組の加藤拓也さんが、上演台本・演出を担当するシス・カンパニー『友達』。安倍公房作品が加藤さんの手に掛かるとどうなるのか本当に楽しみです。あとやっぱり外せないのは、劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』。ACTシアターで観る新感線もこれが最後。刮目したいと思います。韓国版がとても良かったミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』も。そして、高知、北海道、そしてその近隣のみなさま、ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』ぜひ!!!

 

ローチケ演劇部_たの優先順位高め!

た

まずは!2021年劇団☆新感線41周年興行 秋公演 いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』です。「満を持してのフルスペック“いのうえ歌舞伎”」と聞いただけで正座待機からのクラウチングスタート体勢。何をおいても劇場に馳せ参じなくては、と鼻息荒くしています。ちょっと気が早いですが10月にはライブビューイングもありますよ!
燃え殻さんの原作を佐藤佐吉さんが脚本に、朗読するのは成田凌さん&黒木華さんにコムアイさんの歌唱、と気になるポイントだらけなのが朗読劇『湯布院奇行』予告動画の妖しい雰囲気にときめきます。東京演劇アンサンブル『タージマハルの衛兵』は、2019年の新国立劇場での上演と同じ小田島創志さんの翻訳で上演されるようなので、演出・キャストが変わるとどう変わるのか楽しみにしています。
劇場へ足を運ぶ、映画館でライブビューイングを観る、配信を観る、劇場には行けなくてもTwitterでみなさんの感想を読んで楽しむ、などなど。まだまだ落ち着かない状況は続きそうですが、自分ができる、自分なりの方法で舞台を楽しむことを続けていきたいと思います。

 

演劇ジャーナリスト・徳永京子の優先順位高め!

徳永京子

8月よりも中止や延期のニュースを多く聞く9月。今、予定されているすべての公演が安全に開催されるよう祈りつつ、取り上げるのは3作品。

まず、歌舞伎座の第三部『東海道四谷怪談』。4月と6月、『桜姫東文章』を「上の巻」「下の巻」を分けて上演し、70代という年齢を超えた奇跡のような艶めきで歌舞伎座を満たした片岡仁左衛門と坂東玉三郎のコンビが、こんなに短いスパンでまた観られるとは。お岩を玉三郎、その夫の伊右衛門を仁左衛門が演じるが、ふたりがコンビでこの作品を演じるのは38年ぶりとのこと。4月の「優先順位高めです」でも書いたけれど、このふたりと同じ時代に生まれて演劇に興味があるとしたら、チケットが高いのは承知で、何とか1度は生で観ておいてほしいと切に願う。容姿も動きも声も、また衣裳の着こなしも、歌舞伎俳優の中でずば抜けて美しいのと、歌舞伎特有の短いスパンで飛躍する登場人物の気持ちを、ロジックとは違うところでまとめて着地させる強靭なしなやかさという点でも、仁左衛門と玉三郎は桁違いなのだ。そしてこのコンビが観られる機会はきっと、そう潤沢ではないはずだ。

文学座の『熱海殺人事件』は、コロナ禍による緊急事態宣言で1年半前に中止になった企画を、改めて上演するもの。期待も高く、あっという間に前売りが完売になったが、追加公演が発表されたり、ライブ配信も用意されたので、チケットが購入できなかった方はぜひそちらを。

私が注目するのは、自分は他よりも上にいると認知しているひとりの人物が、別の人物に対し、外見や出身地や学歴などを理由に徹底的に蔑み、言葉の暴力、時には身体的な暴力で極限状態に追い込んでいくというつかこうへい戯曲を、30代の女性演出家である稲葉賀恵と今回のキャストがどう再構築するのか。多くのつか戯曲に共通する「いじめたのは好きだったから」「いじめた方もつらかった」というマチズモを2021年にふさわしく検証し、熱と情に逃げない上演をきっと見せてもらえると期待している。

そしてコトリ会議の『スーパーポチ』。兵庫公演は8月に終演しているが、内容はまったく知らない。なので、7月の『もしもし、こちら弱いい派─かそけき声を聴くために─』で上演された『おみかんの明かり』について書きたい。

人里離れた山奥の湖に、そこに行けば死んだ人と会えるという噂を信じてひとりの女性がやってくる。果たして死んだ恋人が現れるのだが、彼をよく見たいと近付こうとしたその時、宇宙警備隊員の女性が現れ、生きている者と死んだ者が会ってはならないと警告。いくつかのすったもんだのあと、警告を無視して生きている地球人と死んだ地球人は連れ立って山を下りていく。と、その直後、宇宙警備隊の女性の前に死んだ夫が現れ、彼女は自分が地球人に伝えた禁を破り、夫の顔を見るために近付いていく──。私はこの後半、宇宙人の女性と死んだ夫の再会は、地球人の女性に刺激されて宇宙人の女性が見た幻ではないかと思った。でもそれは、地球人の女性と変わらない、亡き人への強い思いだ。だからようやく夫の顔を近くで見た時、「あなた、こんなにかっこよかった?」という瑞々しい言葉が漏れた。山本正典の書く物語は死んだ人をこの世界と分けない。そしてそのほうが心が潤うことは少なくない。『スーパーポチ』もそんな作品ではないかと想像している。

徳永京子
ひとつの作品についてだらだら考えるのは悪くないと最近は思っていて、上演期間が終わった公演でも感想をつぶやくことに前向きです。
Twitter:@k_tokunaga