黒木瞳 インタビュー|甘くない話 ~ノン・ドサージュ~

黒木瞳が『甘くない話 ~ノン・ドサージュ~』で舞台初演出を手がける。黒木本人が「今まで見たことのない、謎解きヒューマンエンターテインメント」と語る同作について、演出家・黒木瞳の思いを聞いた。

 

そもそも同作を演出することになった経緯は──。

「すばらしい劇場が取れたので、演出をやらないかと声をかけていただいたのがきっかけです。そこで何か面白いものができないかと考えたとき、人は本当はとてもやさしい存在であること、そして、人はもっと人に頼ってもいいということをテーマにした、ヒューマンエンターテインメントに思いが至りました」

介護福祉士と公開対談を行なったことも大きかったと振り返る。

「弱っているときには人を頼っていいんだと改めて感じました。介護福祉士の方が、ありがとうの言葉が励みになると言っていたことも印象に残っています」

『甘くない話 ~ノン・ドサージュ~』は、さらにそこに「謎解き」の要素が加わる。

「私、アメリカのドラマシリーズの『ツイン・ピークス』が大好きでした。怖いのに笑える、あの独特な世界観と、“彼女はなぜ死ななければならなかったのか”というテーマも、今回の企画に結びつけたいと考えました」

人がやさしいということと、『ツイン・ピークス』的な要素──。 『甘くない話 ~ノン・ドサージュ~』は、物語は一人の女性の事故死から始まるというが、いったいどんな舞台が誕生するのか好奇心がかきたてられる。

「そうですね。まずは観にきてください(笑)」

 

これまで長編映画の監督やショーの演出を複数手がけている黒木だが、舞台を演出するのは今回が初となる。

「物語を伝えるという点では映像も、舞台も大きな違いはないと思っています。気負わずに、取り組みたいと思っています」

自らが演じることと、演出することの違いについては、「演者として作品に関わるときは、監督や演出家がどのような女性を私に求めているかを理解し、その女性になることが女優の醍醐味と考えています。演出の場合は、私がそれを要求する立場になるわけです。ただ、演者としての経験が長いので、演者の視点で要求することができるかな、とは思っています。映画では、ぎりぎりまで女優と一対一でディスカッションしました」と語る。

 

『甘くない話 ~ノン・ドサージュ~』のキャストに関しては、「キャスティングだけでも楽しんでいただけるのではないでしょうか」と太鼓判。早くも演出家としての顔をのぞかせる。

「信頼できるキャストが揃いました。村井良大くんは舞台で共演したこともありますし、私が監督した『十二単衣を着た悪魔』(2020年)にも出演していただいていて、性格もわかっています。今回は、今までにない村井良大をお見せしたいと思っています。蘭乃はなさんは後輩であり、大好きな娘役さん。壊れそうなくらい繊細な彼女のイメージを更に壊したいなという思いがあります。西野太盛さんには、今回、女性の格好で登場していただきます。紅二点の一角を担っていただくのですが、とてもかわいらしいんですよ(笑)。オーラのある市川九團次さんが、歌って踊ったらどんな風になるかも楽しみです。高崎翔太さんと、馬場良馬さんはお二人が出られた舞台を拝見させていただいていますが、身体で表現するのがうまい役者さんだと感じています」

振付のラッキィ池田は、「謎解きではあるけれど、絶対に笑っていただきたい。そう考えたときに、真っ先にお顔が浮かんだのがラッキィ池田さんでした」。そして、そんなスタッフ、出演者のケミストリーにも期待したいと力を込める。

 

“ノン・ドサージュ”というサブタイトルは、黒木が愛飲しているノン・ドサージュ(=砂糖が入っていない)のシャンパーニュから取っている。

「ノン・ドサージュのシャンパーニュは、甘くはありませんが、ぶどう本来の甘さは残っています。今回の芝居も、決して甘くはないストーリーのなかに、エッセンスとして、人情味などを盛り込めたらいいなと考えました」

ちなみに、そのノン・ドサージュのシャンパーニュ、黒木は箱買いしているそうだ。

「決して高いものではないんですよ。いま舞台でそのボトルを使おうと、必死で集めています(笑)」

 

最後に本作を楽しみにしているファンへのメッセージをもらった。

「たくさん笑って泣いて温かい気持ちになっていただきたいです。ホラーを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、ホラーではありません(笑)。“このキャスティングで、いったいどんな舞台をやるんだろう?”という好奇心で構いません。ぜひ足を運んでいただき、たくさんのお土産を持ってかえっていただきたいです。私自身、これまで映画や舞台からたくさんの元気や勇気をもらってきました。エンターテインメントは、観た方に何かを感じていただくのが役目。とくに、ライブの舞台は、お客様が入ることで稽古場では出ない熱量が発生します。こんな時期だからこそ、世の中捨てたものじゃないと前向きな気持ちになっていただき、支えあうことの大切さを感じていただけたら、と思います。初日の幕が開かないこともある、そんな世の中になってしまいましたが、私はライブの力を信じています。スタッフ一同、心を込めて、自信を持ってみなさまにお届けできるように準備を進めています。どうぞ楽しみにしていてください」