“今月の”優先順位高めです 【2021年11月号】

2021.11.01

優先順位高め

今年もいよいよあと2か月となりました。ここのところは、感染者数も落ち着いており、徐々にではありますが、これまでの日常が戻りつつあるような感じがしますね。徐々に寒くなってきておりますので、劇場の熱気を感じにいきましょう!というわけで、今月の「優先順位高めです」です。

俳優・山岸門人の優先順位高め!

山岸門人

出演する音楽劇「海王星」の稽古が始まりました。複数のカンパニーがいる稽古場だったりするので、バラシをしてる稽古場をみたりすると、無事に稽古が終わったんだなぁ、我々も頑張りますっ!と勝手に勇気のようなものを感じたりします。

そんな11月の公演を観劇チェック!「パ・ラパパンパン」が気になりますねえ。松尾スズキさん演出、作が藤本有紀さん、出演が松たか子さんをはじめ…。もう絶対に面白いですよね!チラシにも〝無限大極上エンターテイメントの誕生”と。無限大極上、堪能してえええっ!行きます!他にはPARCOプロデュース「ザ・ドクター」「アルトゥロ・ウイの興隆」も気になっております。日が短くなってきた11月ですが、少しでも明るい日本になってると良いなあ。


山岸門人
俳優。TBS日曜劇場「日本沈没ー希望のひとー」毎週日曜日放送、大友麟太郎役で出演中です。12月よりPARCO劇場で音楽劇「海王星」出演。是非に。あと、LINEスタンプも発売中です。
Twitter:@yamagishimondo

 

俳優・片桐美穂の優先順位高め!

片桐美穂

ナイロン100℃「イモンドの勝負」COCOON PRODUCTION 2021+大人計画「パ・ラパパンパン」はえぎわ「ベンバー・ノー その意味は?」等々…。11月は「絶対面白い!」の渋滞!どこ歩いていても「絶対面白い!」にぶつかるんですけど!なんて贅沢!

どれもこれも観たいけれども、私の優先順位圧倒的トップは、アル☆カンパニー「POPPY!!!」です!昨年のリーディング公演を経て、今回が本公演だそう。脚本・演出は桃尻犬の野田慈伸さん。

今年の「悲劇喜劇」3月号に脚本の掲載があったので、一足お先をさせていただきましたが、直球で感情を伝えられない不器用な人たちが、なんだか足掻いて頑張ってる、とっても愛おしい作品でした。野田さんの作品は、リズミカルでゲラゲラ笑えるのに、時々急ハンドルで核心を突いてくるから癖になる。なんだろ、ポテトチップス食べてるんかってくらい癖になります。止め方が分かりません。「私も、もう少し頑張ろー」と自然に前向きになれる気がしてます。


片桐美穂
役者。声が大きくて奔放な「女ジャイアン」的な役回りが得意で、小劇場を中心に活動してます。実際は、店員さんを呼び止められないくらい声が小さくて小心者です。お酒とクラシックバレエがとにかく大好き。12月音楽劇「海王星」(PARCO劇場)出演。

 

俳優・田代明の優先順位高め!

田代明

まずは、あいまい劇場其の一『あくと』。「IMY(あいまい)」は山崎育三郎さん、尾上松也さん、城田優さんから成るジャンル不問のエンターテイメント集団。そんなIMYの初公演ということでとってもワクワク。演出が成河さんなのにもワクワク。ミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード」も気になってます。去年度の際に行けず…個人的にスミティ役の林愛夏さんが大好きで、「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」「検察側の証人」等、観る度にファンになっています。作品自体は明るく楽しいコメディミュージカル。そして、ダンス盛りだくさん。ダニエル・ラドクリフさんがトニー賞でゴリゴリに踊ってるのを見た時は、ハリーってこんなに踊れたんだ…とめちゃくちゃ驚いた事を覚えています。芸術の秋、まだまだ続きます。


田代明
女優。秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」劇団員。東京藝術大学声楽科卒業。「お芝居の素敵なミュージカル女優さん」と言われる為に、日々いろんな作品を勉強中。そしてシンプルな観劇オタク。
Twitter:@Akari4_50

 

演劇ジャーナリスト・徳永京子の優先順位高め!

徳永京子

大激戦必至の当日券に、すでに徒労感を感じている人がいるのもよくわかるのだけれど、当日券が毎ステージ発売されるということは、当たる人が必ず出るということなので、NODA・MAP『THE BEE』はやはりお勧めしておきたい(販売方法などの詳細は公式HPで最新情報をチェックされたし)。
俳優がゆっくり鉛筆を折る。それを見て、なぜ胸がかきむしられるように苦しくなるのか。激しい痛みをリアルに想像してしまうのはなぜか。“見立て”から“我がこと”という演劇の大きな特色の最短距離と繊細きわまる複雑な手順がここにある。
キャストの中では長澤まさみに最も期待。先日、パルテノン多摩の演劇講座でワタナベ・エンターテインメント社長でプロデューサーの渡辺ミキさんが、入社した俳優志望の若者には必ず「俳優は作品の一部だと言い聞かせる(残念ながら通じない相手もいるが)」と話してくださったけれど、ある時点で長澤は、それを深いレベルで理解し、きれいに撮られたいとかやるなら主人公といった表面上の問題とはまったく別の、俳優にしかリーチできないやりがいを感じるようになったのだと思う(念のため書くと彼女はワタナベエンターテインメント所属ではない)。『THE BEE』という相当なタフさが求められる作品で、それがどんなふうに深化するのかを確認したい。

主に若い世代から生まれた潮流のひとつを「弱いい派」と名付けて7月に芸劇eyes番外編「もしもし、こちら弱いい派─かそけき声を聴くために─」というショーケースを開催したが、言うまでもなく潮流はそれだけではない(「弱いい派」がどんなものかはあちこちに書いたのでここでは割愛。初耳の方はググっていただけるとありがたい)。もうひとつ確実にあるのがミニマリズムだと思う。

関田育子(団体名であり、作・演出家の名前でもある)がまさにそうで、セットや小道具を徹底的に絞り、せりふの抑揚も排し、人形振りのごとく単純化された動作を俳優が淡々と繰り返すという、抽象の掛け算がある時点から一気に、実際には見えないのに強力な具象のイメージを観客に共有するという現象をつくり出す。前作『盆石の池』は、ホワイトキューブの空間に、映画やテレビドラマなどリアリティを前提にした映像にはあり得ない構図に俳優を配置して“映像上で交わる視線”を生み出して驚かされた。新作のテーマはマスクと演劇というまさに旬なものだが、ごく普通の考察が関田育子から出てくるわけがなく、ただただ楽しみ。

劇団あはひもまた、ミニマリズムの作風を持つ集団だと思う。能やシェイクスピアなどの古典を題材にするも原典の濃度が薄く、かと言って、どんな題材も自分達のスタイルにしていく癖の強いアレンジ法があるわけではない。また、古典を使って現代の問題を撃つといった社会性も前面にはない。言ってみれば“漂白された古典”で、あわいという劇団名が、間だけでなく、淡いとも取れることを考える。新作はエドガー・アラン・ポーの小説を下敷きに、幽霊から届く手紙の話になるという。本当に必要なものを大事に使う人特有の品と余裕が漂う彼らの動向には、引き続き注目したい。

徳永京子
ひとつの作品についてだらだら考えるのは悪くないと最近は思っていて、上演期間が終わった公演でも感想をつぶやくことに前向きです。
Twitter:@k_tokunaga

 

ライター・中川實穗の優先順位高め!

中川實穗

今月、わたしの優先順位が最も高いのは『水深ゼロメートルから』です。取材のために脚本を読ませてもらい、稽古場を見せてもらい、キャストを取材させてもらい、そうなりました。この作品は2019年に徳島市立高等学校演劇部によって発表され、第44回四国地区高等学校演劇研究大会の文部科学大臣賞に輝いたものです。脚本は当時高校生だった中田夢花さん。登場人物は女子高生4人と先生1人。舞台は高校のプール。なにか事件が起きるのではなく、高校生活の1コマがワンシチュエーションで描かれています。もとの脚本は高校演劇のルールの中で書かれたものなので、今回のために中田さんが少し書き足されたそうです。演出は小沢道成さん。わたしは初めて脚本を読んだときに刺さったものがずいぶん経った今も抜けません。だけど現場におじゃまして、そこをスコーンと越えた舞台になる予感がしました。めちゃくちゃ楽しみ! きっと観る人の人生経験で感じることは違う気がします。だけど老若男女問わずに楽しめる舞台だと思います。


中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

 

ライター・河野桃子の優先順位高め!

河野桃子

先月ご紹介した2作『いのち知らず』(作・演出・出演:岩松了)と、ほろびて『ポロポロ、に』(作・演出: 細川洋平)がどちらも大満足でしたので、幸せな10月。そして11月は、これまた驚くほど楽しみな公演が目白押しの月です!? おかげでここしばらくスケジュールを調整して観劇パズルに四苦八苦しております……!

中でもおすすめしたいのは、チケット発売時間前からスタンバイをした『アルトゥロ・ウイの興隆』。2020年に上演した草彅剛さん出演、白井晃さん演出の音楽劇の再演ツアーです。11月14日から神奈川、12月に京都、1月に東京で上演されます。初演も大変評判がよく作品としてもおすすめですし、舞台俳優としての草彅さんの力強さはぜひ劇場で観ていただきたいです。

11月5日から下北沢小劇場B1で上演される名取事務所『女は泣かない』。現代韓国演劇上演として、30代の劇作家イ・ボラムさんの翻訳初演です。昨年上演された『少年Bが住む家』では、14歳で殺人を犯した少年とその家族を描きました。今回は性的暴行を題材にした重苦しい題材ですが、性暴力やフェミニズムについて様々な激論が交わされている近年の韓国の状況は、日本の話かと思うほど重なって感じられます。今の時代、私達が目を背けてはならない問題に演劇がどのように向き合うのか。同世代としてもとても興味があります。

また上演は静岡のみですが、SPAC『桜の園』も飛んで行って観たい一作。チェーホフの戯曲を、これまで3度SPACと共作してきたフランスのダニエル・ジャンヌトーが演出します。サイトからはジャンヌトーのコメント付きトレーラーもご覧になれますのでぜひ。


河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

 

ライター・古内かほの優先順位高め!

古内かほ

COCOON PRODUCTION 2021+大人計画『パ・ラパパンパン』、松尾スズキさん演出の作品に松たか子さんが出演するのは意外にもこれが初めて、という事実にびっくりですが、記念すべき初タッグはぜひ観ておきたいところ。松さんがティーン向けの小説家に扮した“ミステリー・コメディ”ということで、どんな物語が展開されるのか、松さんのコメディエンヌぶりも含めてとてもたのしみです。

行ってみたかった劇場「新宿シアタートップス」で、わたしに演劇、観劇のおもしろさを教えてくれた劇団はえぎわが二年半ぶりの新作を上演するというので、もうなにがなんでも行きますね、というかなり前のめりな気持ちです。『ベンバー・ノー その意味は?』というタイトルからもまったく内容が想像できないのですが、観終わったときに登場人物全員が愛おしく思えるあの感じ、は味わえるような、そんな気はしております。ノーヒントで観るのもたまにはよいものです。

今月上演されるミュージカルでそそられるのは『魍魎の匣』。キービジュアルからも、京極夏彦さんの描く世界観と主演の小西遼生さんの持つ雰囲気がぴったりそうだな、と期待!

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はダンス公演も積極的に観に行きたいです!
Twitter:@kahonfuu

 

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

白

7日までKAATにいるので観劇は8日以降。やはり外せないのは、3年ぶりの劇団新作公演となる、ナイロン100℃ 47th SESSION『イモンドの勝負』

これは外しちゃならないですね。「観なくても損はない、捨て身の出鱈目芝居」というコピーを見た時、劇団健康のCD「出鱈目的」を思い出しました。紀伊国屋書店の2階で買ったなー。調べたら発売は1989年ですって!当時はCDから作品が流れてくることと(音楽が流れてくるものとしか思っていなかった)、そしてその出鱈目感に衝撃を受けました。というくらい、昔っから僕の中でKERAさんは特別なので、公演を楽しみにしたいと思います。

あと、5日の心臓丸の公演は合間縫っていくと思います。頑張れ心臓丸。

 

ローチケ演劇部_マロ の優先順位高め!

マロ

緊急事態宣言が解除されても引きこもり精神が解除されていないマロです。

今年も残りわずかですが、年末までに脱!引きこもりの為、みなさまのおススメ公演をチェックして面白い作品に巡り合いたいと思います!

今月の私の優先順位高めは、劇団おぼんろの『OBONRO CINEMA MUSEUM』という映画祭です。『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』は配信も予定しているので、おうちで絵本の中に潜り込んだような極上のエンターテイメントを満喫するのも良しです!会場では「手触りのある物語体験ができる映画館」や「物語を旅する映画館」を目指すとあったので、こちらも楽しみです!

続きまして、「疑い」をめぐって緊迫した濃密な会話劇が繰り広げられる『ダウト ~疑いについての寓話』。どんな話なのかさっぱり想像がつかないのですが、なぜか惹かれる…。

『パルコ・プロデュース2021 ザ・ドクター』も気になる作品です!主人公にあらゆる社会問題が降りかかる中、どのように向き合い見つめなおしていくか…きっと考えさせられるのだろうなぁ。

いずれにしても、どの作品も観るのに体力が必要そうです!