舞台『最後の医者は桜を見上げて君を想う』|細貝圭・山本涼介・久保田創 インタビュー

二宮敦人の小説を舞台化した「最後の医者は桜を見上げて君を想う」が9月8日~11日に東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!にて上演される。とある病院を舞台に、生と死を見つめる医者と患者の姿を描き、細貝圭、山本涼介、鳥越裕貴、今泉佑唯らが出演。構成演出を岡村俊一、脚本を久保田創が務める。命のきらめきを目の当たりにするこの物語に、細貝、山本、久保田の3人はどのように挑むのか。話を聞いた。

本作は生と死を見つめるような作品になっていますが、まずは出演にあたって、作品の第一印象をうかがいたいと思います

細貝 なんとも言えない気持ちにはなりました。人間として生きていく中で、生まれてからずっと決断ってしていかないといけないじゃないですか。でも、死ぬ時までも決断なんだな、というのが、自分の中に印象として強く残りましたね。

山本 難しいな、って思いましたね。やっぱり命に関するものですし、繊細に扱わないといけないとすごく感じましたし、しっかりと1つ1つを考えてつくっていかないと。だからか、最近は稽古が終わるともう、10時半とかに寝ちゃうんですよ。普段は2時3時まで起きているのに、エネルギー切れです(笑)

細貝 頭が疲れるよね。体も全然使っていないのに、すごく疲れるんですよ。

久保田 本当に、生と死を書いてあって、それぞれ、患者も医者も死というものに向き合っているじゃないですか。読んだ時も、「これを台本にするんだ」と思って読んでいるから、のめりこむというよりも客観的に読んでいて、それこそ”~風”みたいな感じでやってはいけないと思いました。実際に演じる人たちが「自分だったらどうするかというところから始めてもらって、”~風”な答えじゃなく、”俺はこう思う”っていう答えを持って取り組んでくれたらいいな、と思いながら書き進めました。

台本にする、と思うと読み方も少し変わるかもしれないですね

久保田 個人的な感想としては、死と向き合うにあたって、自分が死ぬまでに何がしたいだろうか、って思うかもしれないな、ということでしたね。それで、その答えは自分には向いていかないのかな、と。意外と、自分以外の人に”死ぬまでにしたいこと”の内容が向かっているんじゃないかと思いました。でも、読んですぐ台本を書くことに移っていったので、2人とはちょっと感覚が違うかも知れないです。

細貝さんと山本さんは医者という役どころですが、役について今はどのようにとらえていますか

細貝 本当に背負っているものが大きい人間ですね。僕が演じる福原は、あまり相談とかをせずに自分で決めてまっすぐ突き進んでいくタイプ。でも内側には、自信の無さや繊細さは絶対にあると思います。虚勢というわけではないですが、内面の弱さを隠していくというのは絶対にあって、そこが奇跡というところにつながっていくのかな、とも思うんですけど…。人物像に関しては、小説で読んだ印象と、今回演劇の中で見せていく部分とで、演出の岡村俊一さんと話し合ってすり合わせているところです。稽古のたびに、毎回すごく変わっていっているので、もう少し時間をかけて作っていければと思っています。小説よりも、今のほうが共感できる部分も増えてきましたね。葛藤の部分が見えてきて、だからこそ、この言葉なんだというのが見えてきました。

山本 僕が演じる桐子は、現実的というか「苦しんで長生きするぐらいだったら自分のために残された時間を使ったほうがいいんじゃないか」という考え方。リアリストで淡々とそういうことを言うやつです。台本もいろいろと変わっているんですが、軸の部分はそんなにかわっていないので、そこを大事に演じていけたらと思います。いわゆる医者っぽいか、と言われると、桐子は医者っぽくないかも知れません。でも僕自身、どっちかっていうと桐子のほうが意見が合うんですよ。すごく冷めているタイプなので(笑)

細貝 それ、多分みんな感づいていると思う(笑)

久保田 合ってるよね。ハマり役だと思うよ。オフのときも、まんま桐子な瞬間があるよね。

山本 カッコよく言えばクールだけど…人間に興味が無いというか(笑)

久保田 そう、もうそのまま桐子でいい(笑)

山本 僕自身、残された時間というか「何が自分にとって一番いい時間なのか」というのは考えているので、桐子については自然体でやれているように思います。

久保田さんは台本にする際、福原、桐子という2人の医者をどのように描きたいと考えていましたか

久保田 さっき圭ちゃんも言ってくれましたが、福原は背負っているものや葛藤などの表現を足しているんです。というのも、普通に聞いていると桐子の話ってわかりやすいんですよ。「長く生きるよりも、やりたい方を選んだ方が良くないですか?」って言われたら、なるほどな、って思ってしまうじゃないですか。共感してしまうんですよね。だからこそ、福原の論法のほうが立てるのが難しい。2人が拮抗していないとお話が進んでいかないので、そこをどう魅力的にしていくのか、すごく力を入れています。

脚本家として、お2人の印象はいかがですか

久保田 涼介くんは今回がほぼ初めてで、この稽古以外ではそんなに話したことが無かったんです。セリフでも近いことを書いたんだけど、普段はほとんど笑わないんですよ。でも、今とかもちょっと笑ったりする瞬間があるじゃないですか。その瞬間に目が行くような人間性というか、そういうところが魅力的なんですよね。本編の中でも、そういう瞬間を見せられたらな、と思って書いています。それで、圭ちゃんは圭ちゃんで付き合いが長いんですけど、涼介くんとは違った素直さがあるので、そこがぶつかったらきっと面白いものを届けられるんじゃないかと思っています。

今回のお話は、ご自身の死生観も大きく影響するのではないかと思いますが、自分自身が「生きてる!」と実感できる瞬間はどういう時ですか?

細貝 それはもう、舞台に立っている瞬間ですよね。

久保田 うわー、カッコいい!

山本 俺がパッと思いついたのはもう、最低なやつでした。…お風呂に浸かったとき(笑)

一同 (笑)

細貝 俺は家にいるときなんて人前に見せられるようなもんじゃないし、だらしない恰好でダラーっとしてるから(笑)。でも、それが舞台上に立つと「あ、ちゃんと生きてるな、俺」ってなるんだよ。今、ちゃんとしてる!って(笑)

山本 逆だねー。俺は、オフになった時に感じるタイプだわ。

久保田 そういう意味では合ってんだよね、相性が。

細貝 やっぱりなんか面白いんだよね。オフのとき、涼介に何か聞きたくなったりするもん。どんなことを言うんだろう?って。それって、福原と言っていることが一緒なんだけどね。

久保田 そう、だから学生の頃の回想シーンがあるんだよ。小説にはない部分ですが、お前だったらどうするんだ、という意味合いでつくることにしました。

細貝 涼介って変わってるじゃん。人の服と被りたくないから、服も自分で作ってたり。

久保田 今着てる稽古着も自分で作ってるの?

山本 人と被りたくないから作ってるんですよ。今着ている服も「5151995」ってデザインしているんですけど、誕生日です。

細貝 あ、そういうことなんだ!

山本 もうこれを毎日、着てますね。稽古場もそんなに遠くないので、このまま着て来てます。

そういうオリジナリティを表現できたときにも、生きている実感を得られる感じでしょうか

山本 そうですね…でも、自分でもこういうのはおかしいな、って思いますよ。

久保田 その感じ、もうまんま桐子じゃん(笑)

細貝 完全にね(笑)

山本 人と被っただけで嫌になっちゃうとか、おかしいとは思うんですけど、どうしようもないんですよね。もともと服が好きだったっていうのもあるんですけど、どうせなら作った方が楽しいやってね。

細貝 それが涼介だもんね。

久保田さんはどういう時に生を実感されますか?

久保田 初めてのことをやっているときと、追い込まれているときですね。脚本をやるのも今回で2回目なんですけど、やっぱり追い込まれていますね。結構みんなが付き合ってくれて、稽古後に残ってくれたりもして、問題も出てきて、それを改善しようと持ち帰って…それで僕が形にできなかったら、その時間って何の意味もなかったことになっちゃうじゃないですか。そうやって追い込まれてる中で、ひらめいたときとか、何とか進んだときに「あっ、輝いてるな…!」ってなります(笑)。この間も舞台を2本立て続けにやって、しゃべっている間にも倒れそうになったんですけど、そこで踏ん張れたってことは、今はまだ生きているんだな、とかね。

かなりパワーを使って舞台に臨んでいらっしゃるんですね。稽古場の雰囲気はいかがですか

細貝 話し合いつつ、すり合わせのためのディスカッションが多いですね。

久保田 小説にはこうかいてあるけど、実際のところどう思っているのか、とか、そちら側を大事にしている作業が多いですね。演出の岡村さんが「ここ今どう思ってる?」って言って、『俺はこういうつもりで書いているけど、どう?』ってみんなに振ったりして。

細貝 原作のページ数のものを舞台化するということ自体、なかなか難しいところがあると思うので、岡村さんの言うように、この演劇をどう見せるかをみんなで意見を出し合っています。

山本 僕は…圭くんの漢字間違いが好きです。1日に1回はあるんですよ。

一同 (笑)

久保田 いや、本当にね。あるんだよ。さっき、別の取材の時にも「~一見すると、背をそむけたくなるようなところが~」って話してて、背を背けるってどういうこと?って(笑)。目を背けるだよね。

山本 そういう、漢字間違いが多いんです。最近の稽古場での楽しみのひとつです(笑)。すごくなごみますね。

充実しつつも楽しい稽古場なのが伝わってきました(笑)。今回、共演には今泉佑唯さんがいらっしゃいますが、彼女の印象はいかがですか

細貝 ずーみんとは何度か一緒に舞台をやらせていただいているんですけど、本当に小柄なのに持っているパワーはすごいんですよ。感情を爆発させる力はものすごいですね。普段から声も大きくて、この距離感でこの声のデカさじゃないだろ、って(笑)

久保田 それは今だからでしょ。初めて会ったときは”無”だったもん。あれ、今しゃべってた?ってくらい、無音に近かった。それこそ”背けてた”もん(笑)

山本 そうだったの?

久保田 人間が180度変わる瞬間ってあんまり見れないけどさ、彼女の初舞台のときに一緒で。初日が終わったくらいの時に「私、舞台が好きです」って言って、どんどん変わっていったんだよね。持って生まれたものがあるんだろうな。

細貝 わかりやすいですよね。ここに興味があって、ここは興味がない、っていうのが明確にわかる。

久保田 わかってないところもわかりやすいよね。初演と再演でも、全く変わってたりするし。「今、わかったんです」って。そんな変わる?っていうくらい(笑)

山本 僕はまだお会いしたことがなくて、お芝居も拝見したことはないんですよ。でも、すごくお芝居が上手な方というのはいろいろな人から聞いているので、共演できるのが楽しみです。

もう一人の医者役、鳥越裕貴さんの印象はいかがですか

細貝 とりは本当に、うるさい大阪のおばちゃんですね(笑)。共演自体は久しぶりなんですけど、すごくパワフルで自分を持っている役者なので、今回がどうなるか楽しみにしています。

山本 僕は共演したことは無いんですけど、夏ごろにやったトークイベントに鳥くんも来ていて。楽屋に居たら、ずっと遠くの方で騒いでいる人がいるなーと思っていたら、鳥くんでした(笑)。ほんと、大阪の元気なおばちゃんですね。

久保田 僕も舞台を見に行ったことがあるくらいなんですけど、すごくしゃべれるし、パワーもあるし、自分の論理をもってやるタイプの役者さんなんじゃないかという印象です。彼のパワーで、台本がまた変わるところも出てくるんじゃないかな。

稽古場の雰囲気を盛り上げてくれそうですね。稽古が大変な時は、ちょっとしたおやつが癒しになったりすると思います。ローソンチケットはローソン系列なので、ローソンでお気に入りのものやいつも買うものなどがあったら教えてください

細貝 最近出ているからあげクンの「とろ~り濃厚チーズ味」はおいしいですね。レジ横にあって、ついつい魅力的に見えて買ってしまいます。

山本 あ、わかる! あれ美味しいよね~。

久保田 食べたことない! ちょっと買ってきてもらっていいですか(笑)

山本 僕は自炊もしているんですけど、やっぱりコンビニ弁当に頼ってしまうことも多いですね。ハンバーグ弁当みたいな。それで最近、「さばの味噌煮」がめっちゃ美味いことに気付きました。電子レンジでチンするだけで手軽ですし。この前は、3日連続で食べてました。

久保田 若い時はコンビニ弁当ばかりだったけど、最近は年取っちゃって、なるべく自炊になっちゃってるんですよね。今度買ってみよう。でも、アイスコーヒーとかはよく頼みます。

山本 ローソンのアイスコーヒーはデカいからいいんですよね。

細貝 そう、メガ! でかいんだよね。

ローソンがいろいろお役に立てているようで嬉しいです(笑)。最後に公演をたのしみにしているファンにメッセージをお願いします!

細貝 もう本当に凄く色々考えることが多い作品でして。出てくる登場人物それぞれに人生があって背負っているものがあって。その人物を通してこの作品を見たらまた違った角度で受け止められると思いますし、見終わった後、凄く自分とこう向き合える時間も出来ると思うのでぜひぜひ足を運んでくださいませ、お願いいたします。

山本 本当に見終わった後、色んなことを考えることが出来る作品だと思うのでぜひ劇場に見にきていただいて見終わった後、存分に悩んでもらえたらいいなと思います。

久保田 今もリモートとかもタブレットとかで全部見れたりするじゃないですか。でも舞台っていい意味で、見る方も一生懸命に見ないといけない。だからより、自分とも向き合ったりする時間にもなったりすると思うんですよね。その上で、見終わった時にこちらも希望を持てる作品にして届けようと思っていますので、是非楽しみにして遊びに来てほしいと思っております。よろしくお願いいたします。

楽しみにしています! 本日はありがとうございました

インタビュー・文/宮崎新之