舞台『ジパング!』さくらしめじ(田中雅功、髙田彪我)インタビュー

ドラマ「半沢直樹」などの脚本を手掛けてきた金沢知樹による脚本・演出のオリジナル舞台「ジパング!」が11月16日(水)~20(日)に東京・草月ホールにて上演される。本作でおよそ3年ぶりの舞台出演を果たす、フォークデュオ・さくらしめじの田中雅功と髙田彪我の2人。彼らはどのような思いで作品に挑むのか、話を聞いた。

――お2人にとっては約3年ぶりの舞台となります。久しぶりに舞台に出演することが決まって、率直なお気持ちはいかがですか?

髙田「舞台が久しぶりになるので、いろいろ忘れている部分があるかな…と、以前の稽古のことを思い出したりしていました。僕らはさくらしめじというフォークデュオをやっているので、いつもは2人だけでステージを組み上げていくんですね。でも、舞台となるともっとたくさんの人と作り上げていかないといけない。その中で、周りにご迷惑をおかけしないように、どう振舞うかはすごく考えました」

田中「3年前に出演した舞台も金沢知樹さんの脚本だったので、3年越しにこのような機会をいただけて、すごく嬉しかったです。忘れられていなかったんだ、って(笑)。また舞台をやりたいな、という思いはずっとありましたし、久々にお会いできるのもすごく嬉しかったです」

――台本をお読みになった印象はいかがでしたか?

髙田「まずは殺陣のシーンがあることに驚きました。やったことがなかったし、刀と刀が交じり合うような激しい殺陣を自分ができるのか、というところで不安がまず大きかったです。あんなにカッコよくできるのかな、って。でも、新しいことに挑戦するのは大好きなので、そういう意味ではワクワクもしました。2つの感情が入り乱れてましたね(笑)」

田中「僕は日本史がすごく好きなので、一応、日本ではないどこか、ではあるんですが、日本刀とかそういう世界観に入るのはすごく楽しみでした。中学の頃から日本史や古典の授業が好きで、百人一首とかも好きなんですよ。なので、歴史っぽい言葉遣いのセリフとか、そういうところも楽しみでした。きっと今のほうがいろいろと進歩しているところがあると思うんですけど、意外と昔の人も今の人と同じようなところがあったり、逆にまったく違う考え方があったりして、そういう違うところに触れたときに面白いなって思うんですよね」

――今回の役どころについて、今はどのようにとらえていますか?

田中「僕が演じるククは、全体から見るとちょっと異質な存在。ほかのみんなは戦士として育っていたりするんですけど、ククは突然、戦う立場になるんです。そういう意味で、周りのみんなとはスタートが違うんですね。みんなの中での当たり前が、ククにとっては当たり前じゃなかったり、その逆もあったり。それが良くないこともあれば、ククだからこそできることもあって、そういうほかの人と違うところをキラッと輝かせることができたらいいな、と思います」

髙田「僕は台本を読んで、摂津という役が憧れの男のように感じました。摂津って、ひと言で場を和ませるようなキャラクターなんですね。自分もそういう存在になりたかったです(笑)。僕自身は…もう、全く逆で5人、いや3人以上になると、ほぼしゃべらなくなってしまうような感じなんですね。だから、摂津のように、ムードメーカーで太陽みたいな性格は、すごく憧れます」

――演じる際に気を付けていることや、課題はありますか?

田中「ククは左手が使えないんですよ。そこが慣れなくて…。そしたら強羅役の宮地大介さんが、帯刀用のベルトで固定してみたら?ってアドバイスを下さったんです。ほかの皆と違って、僕は基本的に帯刀していないので、1本ベルトが余っていたんですね。それを巻いて、動かない感覚に慣れさせていきました。でも、動かないとはいえ、力を入れて固定しているわけでもないので、脱力しているような感じをどうしていけばいいか、まだまだ研究中です」

髙田「僕は人との距離を詰めるのがすごく苦手なんですよ。摂津はそういうところがすごく上手いんです。あと、摂津は感情がすごく目立つようなキャラなんですけど、僕自身はあんまり感情を表に出すようなタイプではないので…いつもより数倍多く笑ったり、思いを表現したりっていう、感情の出し方は研究していかなきゃな、って思います」

――稽古もどんどん進んでいるところかと思いますが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

田中「最近になって、ちょっとずつみんなとの心の距離が縮まってきたように思います。それぞれのキャラクターができてきて、さっきの宮地さんからのアドバイスじゃないですけど、いろいろなことを気軽に話せるような環境になってきたように思いますね。特に、役柄上で近しい人たちとは、より話すようになったと思います」

髙田「本当に、みなさんが優しくていろいろと教えてくださるんですよ。すごく、あったかい。僕らにとっては初めてのことがたくさんある稽古だったので、すごくスパルタだったらどうしよう、って思っていたんですけどね(笑)」

――殺陣は体に馴染んできましたか?

髙田「いやー、まだまだですね。今回、共演させていただく方々には殺陣経験者の方もいて、そういう方と一緒にやるシーンが一番緊張します。やっぱり、だれが見てもずっと殺陣をやってらした方なんだな、ってわかるんですよ。でも、その距離をどうにかして縮めなきゃいけない。とにかく基礎をしっかりしないと、と思って、稽古前30分は必ず殺陣の基礎練習をやるようにしています。殺陣って、1人だけじゃなくて、相手もいて成立するんですね。その互いのチームワーク感に面白さがあるのかな、と少し楽しさもわかるようになってきました。タイミングを合わせて、バシッと決まった時はやっぱり気持ちいいです」

田中「今はすごく楽しめています。さっきも殺陣の稽古をつけてもらっていたんですが、相手との呼吸が合って決まったときはもちろん、それを映像とかで見返して、ちゃんと決まっていた時は嬉しいですね。自分では決まった、って思っていても、見返すとそうでもなかったり、自分ではイマイチでも、見返すといい感じだったりすることもあるんです。自分に手ごたえがない時も、相手がうまく見えるようにしてくれていたりするんですよ。映像を見て、自分がどういう体勢なのか、お客さんから見てキレイにはまっている感じになるようにちょっとずつ改善しています。ククは作品の中で剣が上達していく役なので、そこもしっかり見せられたらと思いますね」

――劇中には戦鼓など、音楽やリズムも重要な要素のひとつになるとお聞きしました。

髙田「僕らは太鼓を演奏する場面はないんですけど、太鼓のリズムって、打ち鳴らされるとすごく胸に響くじゃないですか。物理的にも響くし、感情的にも響くんですね。その振動が稽古中でもすごいと感じます。戦鼓によって力が宿ってくるというような場面があるんですけど、リアルに鼓舞される感覚があるんですよね。太鼓の稽古の時も、思わず拍手が上がるような瞬間があるんですよ。音楽の力ってすごいなと感じますね」

田中「まだまだ稽古の途中なので、今後もっと影響を受けるんじゃないかな、と思っています。太鼓と殺陣も似ているな、と感じているところがあって。それこそ息を合わせるところとか、違うリズムパターンを合わせて1つのパターンにするところとか…。僕らがやっているフォークでも、そういう奏法があるんですよね。それぞれ、やっていることは全然違うんですけど、本質的なところは同じなんじゃないかな、と思っています。うまく決めるために、相手の癖をよく観察したりして、うまくいったらすごく気持ちいい。いろいろな違うものを合わせて一つの舞台にしていくのは、すごく楽しいですし、より一層、いいものができるんじゃないかと思っています」

――根底にあるマインドは同じところにあるのかもしれないですね。日々、稽古で大変かとは思いますが、個人的に決めているルーティンやこだわりなどはありますか?

田中「稽古に限らず、普段からそうなんですけど、僕ってこだわりがほぼないんですよ。昔は、いろいろと決まり事をつくってやってみたりしていました。ライブ前にはコレをやろう、アレを飲んでから、このストレッチを必ず…みたいな。でも、それをやってもうまくいかない時ってあるんです。そうすると「あれ、やってたのに」って、ルーティンを逃げ場にしちゃうんですよね。1年半くらい前にそう思ってから、そういうルーティンを全部なくしました。ルーティンをやることがプレッシャーになって、自分を追い込むような感覚もありましたし…。だから、なんとなくストレッチをやろうとか、喉に良くないことはやめよう、とかはあるかもしれないですけど、意識して決めごとをつくることはしていないです」

髙田「僕も基本的には同じなんですけど…1つだけ稽古のルーティンがあるんです。稽古が終わったら、いつものお店でチョコデニッシュを買って食べてます」

田中「あー! ずっと食べてるね(笑)」

髙田「そう、ずっと(笑)。味わいが濃くて、バターの風味が良くて、バターとチョコのマッチングがすごくいいんですよ。それが稽古後の癒しというか、明日も頑張ろう!っていう気持ちになります。稽古前とか本番前にあれこれやるのは、僕もやめました」

――甘いものは癒しになりますよね(笑)。最後に、公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

髙田「僕らにとっては3年ぶりの舞台になります。本番がどうなるか、まだまだ僕自身もわからないですが、必ずいい舞台にします! ぜひ楽しみにお越しください!」

田中「いいものを作るために僕自身も頑張りますし、共演者の皆さんやセット、衣装、そのほかすべてに最高なものが揃っていると思います。本当にいい時間にしたいと思っていますので、躊躇せず遊びに来てください!」

取材・文:宮崎新之