家族の再生を細やかに描く、ピュリツァー賞受賞の傑作を、最高のキャスト&藤田俊太郎の演出で上演!
2007年にピュリツァー賞を受賞した戯曲「ラビット・ホール」(Rabbit Hole)は、傷ついた心が再生に至る道筋を、家族間の日常的な会話を通して繊細に描いた傑作として知られます。2010年には、ニコール・キッドマンの製作・主演により映画化もされ、数多くの映画賞に輝きました。この珠玉の物語を、近年最も熱い注目を集める藤田俊太郎の演出と、最高の俳優たちの競演で上演します。
4歳のひとり息子を亡くした若い夫婦ベッカとハウイー。息子は、飼い犬を追いかけて飛び出し、交通事故にあった。ふたりの悲しみへの向き合い方は真逆で、お互いの心の溝は広がるばかり。妻ベッカは、彼女を慰めようとする妹や母親の言動にもイラつき、深く傷ついていく。ある日、事故の車を運転していた高校生ジェイソンから会いたいと手紙が届く。それを読んだベッカは・・・・
悲しみの底から、人はどうやって希望の光を手繰り寄せるのか。人間の希望の本質とは何か。「ラビット・ホール」は、わたしたちの身の回りのありふれた風景や会話から、確かな希望の光を鮮やかに紡ぎ出します。
藤田俊太郎熱望の戯曲を演出!
演出は、「ジャージー・ボーイズ」(2016,18,22)、「天保十二年のシェイクスピア」(20)、「NINE」(20)など優れた作品で、数々の演出家賞、作品賞に輝く藤田俊太郎です。藤田俊太郎は2017年からPARCO劇場のレパートリーである朗読劇「ラヴ・レターズ」の演出を手掛けています。またパルコ・プロデュース作品としては、2017年に「ダニーと紺碧の海」を紀伊國屋ホールで演出しました。演劇への熱烈な愛をこめて作品創りに邁進する演出家が、念願の戯曲で宮澤エマをはじめとする屈指の俳優陣と共に、胸に迫る舞台をお届けします。
実力派キャストによる演技合戦に注目!
主役ベッカは、今回が舞台初主演となる宮澤エマです。舞台に留まらず22年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」をはじめ、その確かな演技力で近年映像での活躍も目覚ましく大注目の宮澤エマが、至高の戯曲に挑みます。そして夫ハウイーを演じるのは、作品毎に観客の支持を高め続け、本年度第57回「紀伊國屋演劇賞個人賞」を受賞した成河です。宮澤エマと成河による夫妻の繊細かつ豊かであろう台詞の応酬に期待が高まります。妹イジーは、蜷川幸雄の「ネクスト・シアター」が生んだ大型女優、土井ケイトです。藤田俊太郎作品の常連女優でもある土井のイジーは舞台を弾ませるに違いありません。また、事故を起こした高校生ジェイソンは、人気グループ「7ORDER」のボーカルで舞台等でも多くのファンを魅了する阿部顕嵐とオーディションで抜擢された山﨑光がダブルキャストで演じます。そしてベッカとイジーの母ナットを演じるのは、数多くの演出家から厚い信頼を集めるシルビア・グラブです。「三谷幸喜のショーガール」や森新太郎演出「ジュリアス・シーザー」(21)など、PARCO劇場には欠かせぬ女優です。
あなたの希望は、あなたと共にある。すべての人に響く物語。
2023年春、私たちが今最も出会いたい再生の物語を、PARCO劇場の50周年イヤーに相応しい素晴らしいキャストと演出で、自信を持ってお贈りします。どうぞご注目ください。
コメント
◆藤田俊太郎(演出)Fujita Shuntaro
心から敬愛する役者、宮澤エマさん、成河さん、土井ケイトさん、シルビア・グラブさん。そして才能溢れる阿部顕嵐さん、山﨑光さん。愛おしいカンパニースタッフの皆さんと『ラビット・ホール』ご一緒できることに大きな幸せを感じています。 この戯曲は繊細な言葉で紡ぎあげられた真実の悲劇であり、喜劇だと私は考えています。ニューヨーク州郊外に住む夫婦の幼い息子が事故にあい、その悲しみは癒えることがありません。けれど、身の周りの家族との絆、喜びやおだやかな笑いによって、離れ離れになった二人の精神は再生へと向かいます。耐えられない重さを持った痛みは、やがてポケットの中の小石に変わる。小石は消えなくていい、持ち運んで生きていく。人生は日常と、たくさんの掛け替えのない瞬間でできていて、日々は尊い選択の連続であると物語が静かに語っています。
時代背景は、2003年以降のアメリカ。夫婦の生活を通して、2000年代初頭に私たちが何を得て、何を失ったのかを、時を超え作品が静かに教えてくれるのではないかと感じています。世界中で、そして日本で素晴らしい上演を重ねてきた名作に演出家として挑戦できることに誇りを持って。開場 50 周年という節目を迎えるPARCO劇場、全国の劇場で観客の皆様をお待ちしております。
◆宮澤エマ Miyazawa Emma
ベッカを演じます、宮澤エマです。
この作品のあらすじを端的に説明するのであれば幼い息子を事故で亡くした夫婦とその家族、加害者となってしまった青年の物語となるのだと思います。テーマの重さは分かっていたので、覚悟を持って台本を開いたのですが、いざ読み始めたら最後まで一気に読んでしまいました。
日常的な会話の中で発される痺れる台詞に胸を抉られたり、思わず笑ってしまったり、はっきりと言葉にできないような感情に心揺れたり。物凄い旅でした。これを演じるのかと思うと正直震えます。でも、悲しい物語ですが決して悲劇ではなくて前に進もうと踠く、リアルで魅力的なキャラクター達の繊細で愛おしい物語です。大きな責任とチャレンジですが、心強いキャスト、スタッフで創り上げていける事を心から楽しみにしております。
◆成河 Songha
パルコ劇場に立たせて頂くのはおよそ12年ぶりで、学生時代から通い詰めていた劇場でしたので、今回再びの機会を頂けた事を心から嬉しく思います。念願の藤田俊太郎さんとの2度目の創作、また今回翻訳を担当される小田島創志くんとも心待ちにしていた再会となり、なんだか方々に再会の喜びが溢れています。また、初めてご一緒する宮澤さん、シルビアさん、土井さんも、いつか是非ご一緒してみたいと思っていたパワフルな方たちばかりで、今から気持ちが引き締まっています。個人的にはかなり久しぶりな純粋な会話劇になりますので、普段蓋をしている自分の心の奥、ドロドロしたものに勇気を持って手を伸ばしてみようと思っています。
◆土井ケイト Doi Kate
深く傷ついたひとりの女性と、彼女に寄り添う家族の物語。私はこれは愛の物語だと思っています。劇的な展開やわかりやすい見せ場はないからこそのリアリティ。人の絆や思いやりのような、目に見えないものがそっと舞台の上に乗っているような作品になるのではと感じています。今回、キャストもスタッフも本当に素敵なメンバーが揃っているので、大切に優しく物語を紡いでいけたらと思っております。コロナ禍で大変な時期ではありますが、皆様もしお時間がありましたらぜひ観に来て下さいませ。劇場でお待ちしております。
◆阿部顕嵐 Abe Alan
まず、今回出演のお話を頂きとても光栄です。初めてご一緒する素敵なキャスト、スタッフの方々と交わるのが今から楽しみで仕方がありません。複雑な立場の少年という新たな挑戦、感性を研ぎ澄まし、哀しさの中に希望を見出していきたいです。僕は異物として、この作品に飛び込んでいけたらと思います。
◆山﨑光 Yamazaki Hikaru
今回、ジェイソンを演じさせて頂きます。山﨑光です。この作品を読ませて頂いたとき、日常のどこかでありそうなことなのに、不思議と吸い込まれるように読んでしまいました。ジェイソンは未熟な人間です。そんな未熟さが彼の個性であり、良さであると感じました。僕としては三度目の舞台出演作品になります。経験が浅くまだまだですが、出演者の皆さんに食らいついていけるよう頑張りたいと思います。この作品を一緒に作り上げられることをとても嬉しく思っています。是非、ジェイソンを暖かく見守って頂けたらとうれしいです。
◆シルビア・グラブ Sylvia Grab
また素敵な作品とカンパニーに出会える予感がしています。ユーモラスな家族の日常の会話、その中に潜むそれぞれの悲しみや苦悩。藤田俊太郎さんとこの才能溢れる共演者と共にどのように色づいて行くのか、私自身もどのように色付けされるのか、とても楽しみです。