日中合作の音楽劇「李香蘭-花と華-」│西内まりや インタビュー

第二次世界大戦を生き抜いた伝説の歌姫・李香蘭の半生を描いた日中合作の音楽劇「李香蘭-花と華-」が、1月13日(金)より、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演される。この作品で、主人公となる李香蘭を演じるのは、モデル、女優、アーティストとして活躍する西内まりや。舞台初出演となる彼女は、どのような想いを胸に李香蘭を演じていくのだろうか。話を聞いた。

――今回が初舞台とお聞きしましたが、どのような意気込みでいらっしゃいますか?

本当に初めてなので、本当に真っ裸になる気持ちで挑みたいです。あとは本当に楽しめたら。演出の良知真次さんからも、お会いするたびに「楽しんで!」って言ってくださっていて、その気持ちも忘れずに最後まで走り抜けたいと思っています。

――少しずつ本番に向けて動き始めていますが、実感は出てきましたか?

歌のレッスンもやって、衣装のフィッティングもして、こうやって取材もしていただいて…ひとつひとつの過程を組んでいく中で、本当に舞台ってこうやってできていくんだな、というのを感じています。特に音楽については、譜割というか、セリフと感情と一緒に音があるということ自体が初めてのことなんです。戸惑いながらも、みなさんに身を委ねて頑張っていきたいと思っています。

――舞台そのものについては、どのようなイメージをお持ちですか?

舞台は“観る側”としては、エネルギーやパワー、感情が直で伝わってくる感じがありますね。なので、自分が舞台に“ 立つ側”っていうのは考えていなかったんです。中学生くらいの頃から演技レッスンをしていたんですけど、基本的には映像に寄ったお芝居でしたし、映像のお芝居しかしたことがなかったので、舞台に関しては自分には到底かなわないものというイメージでした。雲の上というか、本当にまったく別のお仕事の印象だったんですよ。もちろん、舞台は観に行っていましたし、本当に心に満ちたものを持って帰って、観た後も何日も何日も考える時間がやってくるんですよね。生の舞台だからこそ、伝わるものが大きいんです。自分がいざ舞台に立つとなったからには、1人1人の心の奥にそういう何かを届けられるような表現をしたい。やっぱりわざわざ足を運んでいただいて、時間をいただいているわけですから、しっかりと伝えたいです。

――今回の作品は、激動の時代を生きた李香蘭の姿を描いた音楽劇です。李香蘭という女性については、どのような印象をお持ちでしょうか?

私、李香蘭さんを知らなかったんです。

今回のお話があって、まず母に相談したんですけど、母は李香蘭さんが大好きで、本当によく聴いていたそうなんですよ。祖母にも演じることが決まってから話したら「李香蘭さんの歌声とまりやの歌声は、重なるところがあると思ってたから、楽しみにしているね」って言ってくれました。母や祖母の世代にとってはスターとして活躍されていたんだな、と実感しましたね。そして、過去の映像や資料を見ていくうちに、どんどん引き込まれていきました。なんで今まで知らなかったんだろう、と悔やむくらい、表現者としての魅力を感じています。今回を機に、同世代にも李香蘭さんのことを知ってもらいたいし、この時代に伝えるべきことがあると強く思いました。それに、自分が今まで表現してきたことと、近しいものを感じたんです。

――李香蘭さんへの共感が、初めての舞台へ挑戦するモチベーションになったんですね

そうですね。私が舞台に立つなんて想像もしていなかったときに、このお話をいただいて、これはやるべきだ、と思いました。あと、良知さんから頂いたメッセージにも心を打たれたんです。もともと舞台っていうだけで無理無理、って思っていて、マネージャーもそれを知っていたんですけど、そのマネージャーから「熱いメッセージが届いているから、見てほしい」と言われて読んだんです。…私にとっては、ラブレターと同じくらいの熱いメッセージで、心を揺さぶられました。良知さんだけでなく、まだお会いしたことのないスタッフさんたちも含めて、その熱い想いに応えたいという気持ちになりますね。李香蘭さんの魅力と、良知さんの言葉が、舞台に挑戦しようと思えた大きな理由です。

――西内さんからみて、良知さんはどのような方ですか?

すごく心が通っている方というか、愛のある方ですね。私という人間にも、かなり深い理解で寄り添ってくださいます。初めての場所に飛び込む上での安心感というか…もうすべてをさらけ出して、ボロボロになってでもチャレンジしていいのかな、と思わせてくれた方です。出演を決めてからも、本当にやるのかな?みたいなふわふわした気持ちでいたんですが、今はすごく安心して飛び込めています。

――舞台の世界に飛び込んでみて、今の手ごたえはいかがですか?

今、歌の練習をしているんですが、もう、つまずきまくりです(笑)。今までも自分で音楽にかかわってきて、曲を歌ったり、自分で作ったりもしてきたんですが、全く違う表現方法ですね。練習に入る前も、お風呂でこういう感じかな?って歌ってみたりしていたんですけど、実際は全然違いました。ミュージカルが好きなので、昔からよく観に行っていたんですけど、セリフがあって、感情があって、そこに音があって、ってなると想像していたよりも何百倍も難しいです。

――どのような難しさでしょうか?

こちらからあまり押し付けすぎてもダメなんですよね。セリフも聴きたいし、メロディも聴きたいし、といろんな要素が一気に詰まっているのが舞台だと思っているので、そのバランスがとっても難しいです。発声法も今までとまったく違ってくるので、今日も先生に「喉で歌うんじゃなく、体で歌うんだよ」と、意識することを教えていただきました。今までは、上半身しか映らない中でいかにマイクの前でブレずに歌うか、という世界だったので、体全体で空気を動かして歌う、というのは全く別物だと思いますね。1個1個のアドバイスを丁寧にやっていけば、一筋の光が見えるはず――という気持ちで頑張っています。でも、この年齢になって新しいことに挑戦できるのは楽しいですね。

――楽曲の魅力についてはいかがですか?

初めて聴いたときは、涙が止まりませんでした。脚本も読んで、李香蘭さんの背景も知った上で聴いたので、余計に曲を聴いて「なんて美しいんだろう」と思いましたね。感情を湧き立てたり、いとおしくなったり、音楽って感情に寄り添っているものだなと改めて感じましたし、1つ1つのメロディと歌詞を大切に伝えていきたいと思わされました。

――李香蘭さんに深く共感していらっしゃるとのことですが、ご自身との共通点などはありますか?

客観的な部分で言うと、李香蘭さんの両親は九州の方なんですが、私も福岡と大分の両親なんです。幼少期にピアノなどの音楽を習っていたことも同じで、幼少期の環境とか、本当に歌が好きで、とにかく歌で人を癒したかったっていう気持ちはすごく近いと思っています。私も、物心ついたときから歌ばかり歌っていて、両親にピアノを習いたいと頼み込むような子だったので。そして、私は芸能界に入ってから、音楽だけでなくモデルをやったり役者もやったりして、とにかく表現者としていろいろなことをやってきました。李香蘭さんも、歌う女優と言われるほど、歌と役者を同時にやっていて、今まで自分がやってきたことを少しでもこの作品で活かせたらと思っています。私、いろんな人から「結局、音楽がやりたいの?モデル、女優をやりたいの?」ってよく言われてきたんです。歌手、モデル、女優の3つをやっていく中で、1つに絞ればいい、と言われてきましたが、私はそれに違和感があって、どの仕事にも魅力を感じていて大好きでした。私はずっと前から、いつかそれが1つに繋がるはずだと思っていたんです。それが、これだったんだ!と私は勝手に縁を感じています。悩んでいた時期もありましたが、李香蘭さんはずっと昔に、もうそれをやっていたじゃないか、って。女優1本だけではできない表現だっただろうし、私の求めていた像だと思ったんです。

――自分の目指したい姿と李香蘭が重なったんですね。映像作品にはあまりない、舞台ならではの稽古の時間をどのように過ごしたいですか?

映像作品では本当に速いスピードでどんどん撮って流れていきます。それもすごく難しくて、楽しいんですけど、今度はいかに時間をかけながら1つのシーンを作っていくか、ということになると思います。なので、決めつけずに、自分の引き出しをいっぱいに探しながら出していけたら。今までの経験とか、自分の概念とか、いろいろな想像を真逆にしてトライしてみたいです。恥ずかしいことでもやってみて、違うよって言われたら、学んでいきたいと思います。安全をとってやらないよりは、やって間違っていきたいですね。でもきっと私、パニックになっちゃって、迷惑もたくさんかけてしまうと思うんですけど、みなさんに甘えながら、舞台という世界に少しでも入っていきたいと思います。

――最後に、西内さんの初舞台を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします

戦争のことなど、歴史的な部分で今の時代の人にも知るべきこと、知るべき真実があると思います。そして、今の時代の音楽はすごく早いサイクルで次に行ってしまうような、デジタルで飛ばしてしまうようなところがありますが、李香蘭さんの時代の繊細に作られている曲を感じ取ってもらいたいですね。強く生きていく、ということは、過去だろうが現代だろうが、みんな変わらない。そして、自分に嘘をつきたくない、みたいな根本的な想いは、今の時代でも変わらないと思います。どんな状況になったとしても、1歩1歩…歩いていくこと、その大切さを、作品を通して伝えることができたらと思っています。李香蘭さんを演じるうえで、「愛」と「強さ」は核になる気持ちだと思います。私自身もそれは大切にしていることで、弱い部分も愛があれば乗り越えられるし、自分を信じる強さも大切なこと。その想いを胸に、演じ切りたいと思います。

インタビュー・文/ 宮崎新之