2024年3月、JR大阪駅前に新劇場「SkyシアターMBS」がOPEN!

2023.04.24

2024年3月、JR大阪駅前に「SkyシアターMBS」と名付けられた新しい劇場がオープンする。開発が進む大阪キタの街に、どのような活気や文化をもたらしてくれるのか。新劇場のこけら落とし公演に主演する藤原竜也が登場し、大阪市内で記者会見が開かれた。

SkyシアターMBSは、大阪中央郵便局の跡地に現在、建設中だ。JRをはじめ、阪急、阪神、大阪メトロなど7つの駅からアクセスが可能という抜群の立地。劇場は地上39階、高さ約188mの複合ビルJPタワー大阪西側の5~8階部分を占める。ロビーは壁一面に窓が広がり開放感があふれる。座り心地のいい椅子と、最新設備を整えた劇場の客席数は約1300席で、オーケストラピットや脇花道も装備。女性トイレは開演前や幕間に長い行列ができるのが世の劇場の常だが、そんな女性トイレの数を男性トイレの倍に増やしたという。

これまでMBSグループは「堂島MBS劇場」や「大阪MBS劇場」をはじめ、2016年に惜しまれつつ閉館した「シアターBRAVA!」など、長きにわたって劇場運営にかかわってきた。登壇したMBSメディアホールディングス代表取締役社長・高山将行( 「高」の字は、<ハシゴダカ>が正式表記)氏は、「我々はメディア企業でコンテンツの制作や発信にこだわり続けてきた。地域のにぎわいの創出もメディアの役割だと考えている。ワクワク感とにぎわいを生み出す存在になるために力を尽くしていきたい」と決意を述べた。続いて、毎日放送 代表取締役社長・虫明洋一氏は「コロナ禍でエンターテインメント界は停滞している。今、その痛手から立ち直り、生の喜びであるライブの良さが復活してきている。2年後には大阪・関西万博が始まる。その1年前に新劇場をオープンさせ機運を醸成させたい」と力を込めた。

また、MBSライブエンターテインメント代表取締役社長・松本圭司氏がネーミングライツについて説明。「地元大阪で誕生したSky株式会社が舞台芸術を支えたいという思いを持っておられ賛同していただいた。パートナーとして協力して作っていこうという思いを込めて名付けた」と劇場の名前の由来を明かした。続いて、MBSライブエンターテインメント 新劇場支配人・村田元氏は「ここ数年間でライブエンターテインメントは打撃を受けている。その中で新しい劇場を開き、街の活気、世界の活気につながっていく一翼を担える劇場でありたい。寺山修司が『書を捨てよ、町へ出よう』と言ったように、私たちは『ショーですよ、街へ出よう』と、皆さんに楽しんでいただくために劇場を作っていきたい」と意気込んだ。

SkyシアターMBSでは、オープニングシリーズとして2024年から約1年かけて多彩な公演を行う。その第1弾として3月下旬に舞台「中村仲蔵」が上演される。その発表とともに、サプライズで中村仲蔵役の藤原竜也が登場。「新しい劇場ができるのは僕ら演劇人にとってありがたいですし、若い世代にとっても非常にいいチャンス。貴重な経験をさせてもらえると思っています」と喜びを語った。初代中村仲蔵は厳しい階級制度の江戸時代の歌舞伎界で、自らの努力で大スターになった伝説の歌舞伎役者。「2年前に勘九郎さんが仲蔵を演じたテレビドラマがあり、僕も共演させていただいたんです。仲蔵は勘九郎さんそのもので、彼の代表作ではないかと。『勘ちゃん、これは素晴らしい。最高だった』と伝えたんです」。その役を今度は舞台で藤原が演じることになる。「勘九郎さん、申し訳ないですけど、僕がやることになりまして…(笑)、と本人にまた言いました」と後日談で会場の笑いを誘った。

歌舞伎は若いころから勘九郎をはじめ、中村勘三郎、中村芝翫、尾上菊五郎らの舞台を見てきたという。「自分がかかわることではないのかなと、観るものとしてとらえていました」。本作は人気劇作家・演出家の蓬莱竜太が演出し、脚本は歴史ドラマに定評がある映像監督の源孝志が書き下ろす。「たくさんの方たちの協力のもとで舞台になる。新しいものを作るということは、何かを犠牲にして前進していかなくてはいけない。皆の力を合わせて、僕たちだけでできる仲蔵を作りたいなと思います。精一杯稽古して、力を出し切っていい作品にしたいです。大変な状況の中、新しい企画をリスクを背負ってやっていただくことはすごい決断だなと思いますし、我々も一生懸命やらなければと改めて思います」と気を引き締めた。

日本の演劇界を背負う藤原は、「演劇というのはヨーロッパのように常に隣にある触れやすいものだと思う」と語る。「若者が大阪のキタやミナミに集まるように、自然と劇場に流れていく時代がくればいいなと若いころから思っているんです」と熱を込めた。

オープニングシリーズでは、このほかブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」(4月上旬)、シェイクスピアの「リア王」(4月中旬)、MBSテレビpresents『落語会』(4月下旬)、こまつ座「母と暮せば」(7月下旬)、ヨーロッパ企画の公演(10月)などが予定されている。藤原も「このラインナップは文句のつけようがないですね。海外からの小さい劇団なども呼んでもらい、より多くの人に演劇を伝えてほしい。皆さんもたくさんの戯曲にふれて感性を広めてほしいです」と呼びかけた。

取材・文/米満ゆう子