“今月の”優先順位高めです【2023年8月号】

2023.08.01

8月!夏!暑い!そうだ、劇場へ行こう!
というわけで、夏バテと熱中症に気を付けつつ、今月もたくさん劇場に行きたいと思います。
みなさんの観劇の参考になれたらいいなの想いをこめまして、「今月の優先順位高めです」です。
今月より、異儀田夏葉さんご参加です。

俳優・異儀田夏葉の優先順位高め!

はじめまして。
異儀田夏葉という、Fish or Beef?くらい本名ですか?芸名ですか?と聞かれやすい名前のものです。
俳優をしております。
気持ちはいつでも演劇少女でございますもんで、観劇もわりといたします。
今月から!はりきってこちらのコーナーに参加させていただきます!!よろしくどうぞ!!

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」
この中に、私に海外戯曲をやらせてくれる方はいらっしゃいませんかー?
と叫んでまわりたいくらい海外戯曲好きなのに、まあとんとオファーが来ない。
私は、チェーホフが、好きなんだい!!
というわけで、キャストも豪華でワックワクの桜の園。
ショーン・ホームズさんの演出も楽しみだし、何と言っても安藤玉恵さんや川上友里さんが出演されるのが超絶楽しみ。

コンプソンズ#11「愛について語るときは静かにしてくれ」
今飛ぶ鳥を落とす勢いのコンプソンズ!!
過去に観たものが、作・演出が金子さんではなく、劇団員たちが作・演出したものだったので(それもすごく面白かった!!)、金子さんが作・演出のもちゃんと観とかないとなとおもっております。劇団員の方々が皆飄々としていて狂気を纏っていて素敵よなぁー。センスの塊感というか。あんな役者になりたかったなぁ。辻凪子ちゃんも出る!!

小松台東「オイ!」
演劇って、年齢とか性別関係なく演じてもよくね?的な懐の深さが魅力だと思うんです。
宝塚だって歌舞伎だってそうだしライオンキングなんかもう人間ですらない。
だからいっぱしのいい大人が高校生演じてもよくね?
というわけでなかなかいいお歳の皆様が高校生を演じるようです。
それだけでワクワクしませんか。
高校生役、今やるとしたら私はどうやるだろう…。
ちなみに、アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」みなさんご覧になりまして?
残念ながら途中から公演中止になってしまったけど、私は運良く観られましてものすごい観劇体験でした。
若い才能たちと中学生たちの1年を描いたモダンスイマーズの蓬莱さん。
そのモダンスイマーズの劇団員である小椋毅さんが、高校生役で出演するのもなんだかムネアツ!!
iaku「逢いにいくの、雨だけど」で共演した尾方宣久さんも出演。そのときも小学生やってた尾方さん、高校生役も楽しみ!!

と、ここまで書き連ねて、小松台東とわたしの出演する公演がどんかぶりというのとに今気づきました…。ジーザス…。
そうなんです。

わたくしもEPOCH MAN『我ら宇宙の塵』の本番があります。わたしも観に行きたいくらいいい作品とおもってます。こちらのステージングも担当している下司尚実さんは小松台東でもステージングしていますよ。
どうか、ともどもよろしくどうぞ!!!

本番終わったら、海!じゃなかった、祭り!でもない。
観劇!!するぞう!!

異儀田夏葉
俳優。次回出演舞台:EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』 8月2日(水)~8月13日(日)@東京・新宿シアタートップス、タカハ劇団『ヒトラーを画家にする話』 9月28日(木)~10月1日(日)@東京・東京芸術劇場シアターイースト。
Twitter:@igitas
Instagram:igitas

俳優・田代明の優先順位高め!

たしろあかりです!俳優と歌手をやっております!
7月本当に暑かったですね…という事で8月も暑いだろうと思われますが、劇場はいつだって適温です。行きましょう。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」
ロシアの劇作家アントンチェーホフ生涯最後の戯曲であるこの『桜の園』。初演から120年の時を経て、新型コロナウィルス、ロシアとウクライナの問題など、第一次世界大戦前の世界の空気に似ていると言われる今こそ、やるべき作品なのだなぁと。魅力あふれるキャスト陣と、パルコ・プロデュース3本目となる演出のショーン・ホームズにより、人間の業をつめた悲しいまでの喜劇が現代版となって幕を開けます。

シス・カンパニー公演「いつぞやは」
第67回岸田國士戯曲賞を受賞した加藤拓也が紡ぐ新作会話劇。「劇団た組」主催である加藤さん、個人的には2019年の『在庫に限りはありますが』がすごく好きでした。ステージ4の癌を患っている男・一戸(窪田 正孝)が主人公の今作。執筆のきっかけを「友人や知り合いが亡くなっても、SNSで繋がっているとその履歴って残るんですよね。亡くなってもういないはずの人の会話が、ある空間には生きている言葉として残っている。それが不思議な感覚だなと感じたからです。」とインタビューで語っており、確かに、と。現代に渦巻く問題を、人間の心理の側面から巧みに織り込む加藤さんの新作は、シアタートラムにて上演です。

ミュージカル『スクールオブロック』
新型コロナウイルスにより中止となった2020年から3年の時を経てついに日本初上演が決定!めちゃくちゃ楽しみです!!日本の子役の皆さんのレベルの高さは、「ビリー・エリオット」、「マチルダ」、「SPY×FAMILY」等、毎回度肝を抜かれます。そして、今回は2チー厶合計24名の次世代を担う子役の皆様が選ばれました。主役(Wキャスト)西川貴教さん、柿澤勇人さんのお2人も全く違うデューイを演じられると思いますが、チームによって12名全員がキャストチェンジする子供達のお芝居にも期待です。

夏休み、お盆ということもあってか、まだまだ紹介しきれない楽しみな作品が目白押しな8月!
皆様ぜひ、家族と、友人と、恋人と、色んな人と一緒に演劇を楽しんで下さい!

田代明
女優・歌手
北海道札幌市出身。東京藝術大学声楽科卒業。演劇、ミュージカル等、舞台を中心に幅広く活動中。
Twitter:@akkarindays

脚本家/演出家・海路の優先順位高め!

海路です。みろって読みます。
“8”って数字は90°回転する毎に、“∞”と “8”をいったりきたりするけど、数の差が凄い大きいな、ってふと今思いました。
てなてなことで、8月の優先順位高めな作品はこちら!!

チェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』
初めて『三月の5日間』の戯曲を読んだ時の衝撃は忘れられないです。そんな岡田利規さんが作・演出を務める本作は、「日本語を母語としない俳優が日本語で演じる演劇」だとのこと。少し前に日本語を母語としない俳優を集めたワークショップを公募していて、その時からずっと気になっていたので、ようやくそれが観れる、ワクワクです!
観劇マナーハードル低めな回、なんてものもあって、あまり観劇経験のない方もぜひ!

劇団時間制作10周年記念公演『哀を腐せ』
ずっと観に行きたいと思いながらも、なかなか行けてなかった時間制作さん。10周年記念公演とのことで、今回こそは絶対観に行くと決めていまして、聞くところにはストーリーも勿論のこと、舞台美術がいつも凄いとの話も聞いていて、どんな空間がシアターウエストに出現するのか、とっても楽しみです。主演にはつい先日もピンク・リバティ『点滅する女』でシアターウエストに立たれていた岡本夏実さん。こんな短いスパンで同じ場所でお芝居拝見できるのか、って嬉しい気持ちになってます!

くによし組壁短編集『壁背負う人々』
なにかと今年、行く機会の多いこまばアゴラ劇場での公演。くによし組さんも以前から面白い面白いと聞いていたものの、なかなかタイミングが合わず、やっとこさ今回初観劇の予定。表題の通り短編集とのことで、今まで上演した架空の宗教団体「壁教」に所属する人々が出てくるお話と新作の全4話のラインナップとのこと。その中でも個人的には「島全体がななめになってる『ななめ島』」という話が気になってます!

あとは今月末からシアタートラムにて始まるシス・カンパニー公演「いつぞやは」も要チェックです!

海路
脚本家。演出家。劇団papercraft主宰。1999年7月20日生まれ。
最近は映像監督もしてたりします。
主な作品『人二人』『檸檬』『殻』などなど。
Twitter:@nonde_miro

脚本家/演出家・萩田頌豊与の優先順位高め!

いよいよ夏本番ですね。

暑い時は皆どうお過ごしでしょうか?僕はクーラーを点けます。
暑い時はクーラをつけて部屋を涼しくします。
そしてあまり外には出ないようにします。どうしても外に用事がある時は仕方ないので外出します。

皆さんはどうでしょうか?

さて、話は変わりますが、有難いことに自分の公演が終わりました。
皆様1人1人の応援のおかげで無事に終わることができました。これからも精進していきたいと思います。
いつか全ての人間と手を取り、そして分かち合える世の中になりますように。
湿っぽくなっちゃいましたね?こんな暑くて晴々しい季節だっつうのに。すいません。

では、以下8月のお勧めです。

コンプソンズ#11「愛について語るときは静かにしてくれ」
ついにきましたねコンプソンズ。
面白いですよね。コンプソンズって。ずっと面白い。
友として成長していく彼の才能をずっと見ていたい。絶対に今作も面白いと信じている。是非皆様、観に行ってください。
コンプソンズの脚本演出の金子くんの家に遊びに行った日に「頌豊与さんきた日からテレビリモコンがないんですよね?」と言われたので「違うよ?俺じゃないよ?」と言ったので
すが、そっちも信じてくれてるよね?

南極ゴジラ『怪奇星キューのすべて』
独自の世界観を既に作り出しているカンパニー。格好良いなと思います。
世界観を作り上げることは難しくて、皆そこで手こずるのに、それを軽々とやってのけている。
おそらく最初から目指す場所があって進んでおられるのだろうなと思います。
そういう劇団は安心して見ることができる。とてもお勧めです。南極ゴジラ。

笑いの内閣『ゴメラの逆襲・大阪万博危機⼀髪』
奇しくも、ゴメラとゴジラが続きましたが、以前コントレックスで⼀緒になりました笑いの内閣さん。
とてもシニカルな笑いで飄々と進んでいく感覚がたまらなく好きです。観て欲しい。
以前、急に作演の高間さんが、皆の前で、俺に相撲をとってきて「どうしてですか!?」って言いながら、投げ飛ばしたんですが、もう6年くらいくらい経った今もどうしてですか?
と思ってます。どうしてですか?

果てとチーク『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』
以前拝見させて頂いた作品が最高のSF作品で、舞台でここまでのSF出来るのかと興奮して劇場を出たのを覚えてます。
おそらくそのまま興奮して家にも帰ったと思います。
SFなのに説明的にならずに作品を立ち上がらせていくのは、脚本家の力でしかないと思います。とてもお勧めです。

以上です。

あと8月7日(月)に立川がじらの独演会がございます。

夏。夏の好きなとこは夕方が綺麗なとこです。めちゃくちゃ暑い昼間があって、少し涼しく
なる夕方が、淡いオレンジ色と⼀緒に混じって、すごく綺麗じゃないですか?まあ、皆知っ
てることを堂々ということではないか。

そしたら、また9月に。

夏が終わる。今年もあと少し。でもまだ少し残ってるよね?うん。だめだ。何も上手い言葉
が思いつかない。終わり!

萩田頌豊与
脚本家。演出家。
日本で最もチケットの取れる劇団『東京にこにこちゃん』主宰。
1991年1月4日生まれ。
身長193cm
体重110kg
Twitter:@CollinesBar

ライター・井ノ口裕子の優先順位高め!

猛暑の夏、涼しい劇場で演劇を楽しみましょう~♪
 
舞台『弱虫ペダル』THE DAY1
8年程前に、2.5次元俳優限定のイケメン本を編集することになり、勉強のために2.5次元舞台をとにかく観まくりました。その中で、最初にハマったのが「ペダステ」でした。当時、正直2.5次元を少しナメていた私の考えを吹き飛ばす面白さで、めちゃくちゃ感動したことを覚えています。キャストが変わっても何度観ても、胸アツになる。原作マンガをまったく知らなくても楽しめるので、是非、初心者にも観ていただきたい!
 
ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.5 -最後の事件-
ミュージカル好きとしては、2.5次元ミュージカルの中でも本格派の「モリミュ」は見逃せない作品です。原作は同名マンガ。コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を原案に、ホームズ最大の敵モリアーティ教授の視点で構築された物語が描かれます。モリアーティVSホームズの戦いがもちろん見どころですが、最大の魅力は音楽の素晴らしさ。モリアーティ役の鈴木勝吾さん、ホームズ役の平野良さんの歌唱力やピアノ&ヴァイオリンの生演奏に毎回うっとりします。
 
日生劇場開場60周年記念 音楽劇『精霊の守り人』
もうひとつ、7月29日(土)に開幕した、上橋菜穂子さん原作の大人気ファンタジー小説『精霊の守り人』を原作とした舞台。精霊の卵を宿した幼いチャグム皇太子と、皇太子を守る凄腕の女用心棒・バルサの冒険はワクワクの連続。アニメ化もドラマ化されておりどちらも期待以上の仕上がりで大ファンでもあるので、舞台でどんな『精霊の守り人』を観せてくれるのか大いに期待しています。バルサ役を元宝塚トップスターの明日海りおさんが演じるのも楽しみです。
※本公演はアーカイブ配信もあり!

井ノ口裕子
ライター。観劇の入口は中学生のときの宝塚。それから観劇は一番の趣味です。小劇場からグランドミュージカルまで、ジャンルは問わず面白そうと思ったら何でも見ます。

ライター・釣木文恵の優先順位高め!

日々、お笑いと演劇を観て暮らしております。お笑いは演劇と比べて情報公開が遅く、公演数も少ないため、なかなか紹介しづらいのですが、少しずつご紹介していければと思います。
 
ラバーガール『インフルエンサー』 
映像コントが注目を集め、若者の間ではYouTuber、TikTokerとして認識されているとも聞くラバーガール。果たしてその実態は、いつ、どこで観てもハズレのない面白いコントを量産し続けるコント師です。本来、コントは漫才とは違い、衣装やセットの準備が必要で、急にネタを変えることは難しいもの。しかし、大勢の芸人が集う寄席公演などで、彼らは客席のリクエストに応えてコントを披露することがあります。基本的には身体2つでどんな世界でも生み出してしまうのです。単独ライブでもさまざまなチャレンジを続ける二人、過去には演出に細川徹さんを迎えた公演を行ったこともありました。大水洋介さんのなんとも言えない雰囲気、飛永翼さんのクールな演技の影に見える棘のようなものがクセになる二人。2年ぶり、2度目の本多劇場での単独ライブでは、どんな世界が繰り広げられるでしょうか。
 
しずる単独ライブ『Like the Butcher’s Bloodstained Cleaver〜見惚れるほど見にくく、残酷なまでに美しく〜』 
お笑いコンビのネタは、たいがいどちらかが書く、あるいは二人で話し合って書く、という形が大半です。そんな中、しずるは二人ともがお互いに関与することなくネタを書くという珍しいタイプ。年2回行われる単独ライブの、冬の公演では村上純さんが、夏公演ではKAZMAさんが作・演出を務めます。つまり、ひとつの劇団に性格の異なる2人の作家がいるような状況。互いに相手の脚本や演出には口を出すことなく、自分が担当していない公演ではキャストに徹するのだそう。村上さんはくだらないものもありますが、セリフのやりとりや間が絶妙な、日本映画的なコントも。KAZMAさんはとことんバカだったり、カッコよさを追求しすぎて面白かったりというコントを得意としています。今回はKAZMAさんのターン。KAZMAさんの生み出すセリフと演出がどれだけかっこいいか、そしてそのことがどれだけおかしみを生むか、ことしの夏も体感したいです。
 
 
ろりえ『下北沢の駅前でやる祭り2023夏』 
マンガや演劇でもお笑いを題材とした作品を好んで見ています。ろりえ『下北沢の駅前でやる祭り2023夏』では、ふだんろりえで作・演出を務めている奥山雄太さんをはじめ、4人の脚本作品を上演するとのこと。岸田國士戯曲賞を受賞したぱぷりかの福名理穂さんをはじめ、演劇ユニット火遊びの松澤くれはさん、高円寺出身のアーティスト、ウクレレ高円寺さんといったメンバーの作品が楽しめるそうです。「スーパーファッショナブル2.5次元ストレートプレイ」?「ファンから舞台女優へのラブソング」? 各人のあらすじを読んでいるだけでも面白そうですが、なかでも奥山さんの作品はトリオ結成10年目の芸人が主人公!これは観ておきたいです。
 
『M-1グランプリ』をご存知の方の大半は、あれは冬の風物詩だと思っているかもしれません。しかし、あの数千組の漫才師の頂点を決める大会の1回戦は、毎年8月から始まっています。『M-1』のすごさはアマチュアを大々的に受け入れている点ですが、アマチュア率の高い1回戦であっても、昔と比べて格段にレベルが上がりました。それでも、有象無象の人たちが集う1回戦を一度見ると、それだけで準々決勝、準決勝あたりまで勝ち上がる人たちのうまさの輪郭がよりくっきりとして、決勝が倍面白くなります。1回戦は全国で行われていますので、気が向いたらぜひ行ってみてください。

釣木文恵
演劇を中心にインタビュー記事などを執筆。最近はお笑い関連の仕事も増えてきました。
Twitter:@troookie

批評家・山﨑健太の優先順位高め!

暑すぎる毎日ですが劇場の冷房は寒すぎて羽織るものが手放せません。

8月の優先順位高め、1本目はコンプソンズ#11「愛について語るときは静かにしてくれ」(作・演出:金子鈴幸)。前作『我らの狂気が生き延びる道を教えてください』は昨年のマイベスト3に入る1本。しょうもないギャグを連打しながら鋭く「いま」を風刺し続けるコンプソンズは「愛」をどう語るのだろうか。

2本目は果てとチーク『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』(作・演出:升味加耀)。映像が無料公開中の前作『はやくぜんぶおわってしまえ』でこの世という地獄を抉って見せた果てとチーク。新作のテーマはミソジニー(女性嫌悪)とミサンドリー(男性嫌悪)、そして宗教ということでこちらも日本の「いま」を映すものになるに違いない。

3本目はPARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」(作:アントン・チェーホフ、英語版:サイモン・スティーヴンス、翻訳:広田敦郎、演出:ショーン・ホームズ)。『セールスマンの死』が抜群にスタイリッシュで面白かった演出家による『桜の園』はその新たな魅力を見せてくれるはず。

そしてもちろん、すでにKAAT神奈川芸術劇場で上演中の範宙遊泳『バナナの花は食べられる』(作・演出:山本卓卓)も見逃せない。岸田國士戯曲賞受賞作にふさわしい堂々たるこの大作は、迷い過つことから逃れられない人間を肯定し、世界を変えようとする気概に満ちている。是非とも劇場で観ていただきたい。

山﨑健太
批評家・ドラマトゥルク。演出家・俳優の橋本清とともにy/nとして舞台作品も発表しています。
Twitter: @yamakenta

ライター・河野桃子の優先順位高め!

誰と、どこで、何をやれば演劇になるんだろう?と考えることがたまにあります。

パペット、小道具、ジェスチャー、アンドロイド……舞台にはいろんな姿や方法で、登場人物があらわれます。EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』は、いなくなった父を探しに家を出た少年・星太郎(しょうたろう)を、半ズボン姿のパペットが演じます。脚本・演出・美術の小沢道成さんは「命の宿っていないパペットというものが、この話にはぴったりだと思った」とのこと。細部までこだわり世界観を立体的につくりあげていく小沢さんの、この舞台にはパペットだ!という直感と根拠が、どんなに作品を深めていくだろうと、不安はありません期待ばかりです!

学生時代に劇団四季『ラインキング』を観たとき、俳優のひとりが、日本語が母語ではない人でした。「せりふも歌詞もよく聞きとれないなぁ」と思いながらも、相手役のことをすごく好きなことが伝わってきて、良い舞台だったなと充実した気持ちを覚えています。4日からはじまるチェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』は、主宰の岡田利規さんが「日本語が母語ではない俳優はその発音や文法が「正しくない」という理由で、本人の演劇的な能力とは異なる部分で評価をされがちである」ということについて、ワークショップなどを通してきて深めてきて、今回ひとつの公演になるそうです。日本で、日本語で上演するってどういうことだろう?。これまで舞台と俳優と観客の在り方をさまざまに模索し、新たな視点を提示している岡田さんの応答が気になります。

ほか、前回公演がとても良かったコンプソンズ#11「愛について語るときは静かにしてくれ」、いつも胸をえぐる加藤拓也さんの描きおろし新作が楽しみなシス・カンパニー公演「いつぞやは」も、優先順位高めです。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

酷暑の毎日でマチネ観劇に行くには覚悟が必要な季節。真夏の観劇はいつにも増して体力勝負です。

夏本番の8月に観劇したい作品は、ミュージカル『スクールオブロック』
2020年の公演中止からちょうど3年。いよいよ日本初演です。真夏にロック!!! 最高!!!
ライブハイスで“プレライブイベント”として開催された製作発表も盛り上がっていました。恥ずかしながら、生徒役の皆さんが、楽器のスペシャリストとして、オーディションで選ばれたと理解しておらず、子役の皆さんが楽器も練習して弾けるようになったのだと思っていたのです。演奏を聞いて、各楽器のいわゆる天才キッズなんだと驚きました。本当にすごい! 彼らがどんな芝居をするのかも楽しみです。
西川貴教さん、柿澤勇人さんをはじめとする、大人キャストのみなさんも個性的で強そう(褒めてます)。劇場でブチあがりたいです!

他にも、夏のカラオケ大会の華やかな舞台とバックステージのドラマが描かれるシアタークリエ『SHINE SHOW!』、オフ・ブロードウェイ発、日本での8回目の上演となるボーイズバンドの物語『ALTAR BOYZ 2023』など、音楽色が強い作品が楽しみです!

岩村美佳
ライター。フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
Twitter:@nyanyaseri

ライター・中川實穗の優先順位高め!

8月です。夏の太陽テンション上がるぜ!って年頃ではないので、無意識に元気になれそうな作品を選ぶ季節です。

随分前から楽しみにしているのがミュージカル『スクールオブロック』。2020年の公演中止を経ての日本初演です。鳴かず飛ばずのロックギタリスト・デューイがひょんなことから名門小学校の先生になって、子供たちにロックを教えるお話。わたしは原作映画がとても好きですし、バンド演奏というものが好きですし、キャスト・スタッフも魅力的な方揃いですし、もう期待しかしてないです! 子供たちの演奏や、デューイ役の西川貴教さんと柿澤勇人さんと子供たちの化学反応、そこで生まれるエネルギー、がんがん浴びるつもりで劇場に行きます!

“魂を救う”ミュージカル『ALTAR BOYZ 2023/アルターボーイズ2023』も楽しみ。日本でも何度も上演されてきた、つまり誰もが楽しめる作品ですが、私は特にキリスト教に触れたことのある方にオススメしたい。というのは、この作品で描かれるのは神と司祭に仕える“使徒=アルターボーイ”の5人によるボーイズグループ「ALTAR BOYZ」のライブだからです。わたし自身、中高がキリスト教の学校だったぶん聖書や祈りの言葉に馴染みがあり、この舞台を初めて観たときに学生時代の友達と一緒に観て盛り上がりたい!と思いました。覚えのある方、ぜひ観に行ってほしいです。

シアタークリエの『SHINE SHOW!』も。オフィスビルのカラオケ大会に参加するサラリーマン出場者と、数々のトラブルに見舞われながらもショーマストゴーオンの精神で乗り切ろうとする運営スタッフの物語――ってこういう設定、わたしはとても好きです。公式サイトに掲載されている中川晃教さんの役説明が「カラオケ大会の場で歌と共にプロポーズをしようとしたが、由梨の元彼(同ビル勤務)と曲目がかぶる」(一部抜粋)で笑いました。磨き抜かれた歌声でのカラオケ、楽しみにしています。

小沢道成さんが主宰のEPOCH MAN新作公演『我ら宇宙の塵』もとても楽しみ。先日、稽古場を取材したのですが、出演者の5人(池谷のぶえさん、渡邊りょうさん、異儀田夏葉さん、ぎたろーさん、小沢さん)のお芝居がとても素敵で、「劇場で観たいな」と思ったのでした。壁一面のLEDディスプレイやパペットの演出も、劇場空間でどんなふうに見えるんだろうと開幕を心待ちにしています。

書ききれないですが、チェルフィッチュ新作『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』も前のめりで観に行きますし、加藤拓也さん作・演出で、窪田正孝さん、橋本淳さん、夏帆さん、今井隆文さん、豊田エリーさん、鈴木杏さんが出演するシス・カンパニー公演「いつぞやは」も同じく前のめりで観に行きます!

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

ライター・古内かほの優先順位高め!

毎日激烈に暑くて今年はしんどい夏ですが、劇場は涼しい!ということで、今月も観劇マストゴーオン。
 
4年ぶりの上演になるミュージカル『ファントム』が楽しみです。作品の最大の魅力は、なんといってもモーリー・イェストンの甘美で耳に残る、素晴らしい楽曲たち。そして宝塚時代でも「この役を演じるために生まれてきた人では?」と思わせるほど説得力のある歌声で魅了した真彩希帆さんのクリスティーヌをもう一度観れるのがうれしいです。前回(2019年)は城田優さんが演出とファントム役を務めることで話題になりましたが、今回はそこにシャンドン伯爵役も追加され“三刀流”に挑戦ということで、こちらもたのしみなポイント。同じくファントムを演じる加藤和樹さんと城田さんの対談取材では、お二人の信頼関係から生まれる作品の深化に期待が高まりました。

ポルノグラフィティの 新藤晴一さんのプロデュース・原案・作詞・作曲による新作ミュージカル、a new musical『ヴァグラント』も気になる作品です。大正時代の日本を舞台に、“マレビト”と呼ばれる芸能の民である青年が主人公の物語。と聞いて、それだけでなんとなくショー的な見どころがありそうだなと勝手に想像しています。ストーリーも含めて、その全貌はぜひ劇場で確認したいところ。新藤さんの音楽、作品の世界観を構築する衣装やセットにも注目したいです。
 
某ビルののど自慢大会を彷彿とさせる、会社員たちのカラオケ大会を舞台に繰り広げられる シアタークリエの『SHINE SHOW!』 は、バックステージもののドタバタ感が楽しめそうな予感。社員(SHINE)がその日一日だけスターになる特別感や、大会と交差して描かれるさまざまな人間模様、またカラオケではどんな曲が披露されるのかも楽しみです。ちょっと夏のお祭りに遊びに行くようなカジュアルさで観に行きたいです。
 
稽古場で拝見して ワクワクしたのは、夏の恒例ミュージカル『ピーター・パン』。11代目の新たなピーター・山﨑玲奈さんの瑞々しさ、溢れるパワーが魅力です。独自の世界観を持つ長谷川寧さん演出の新生『ピーター・パン』は、これまでにないカラーを放っていそうなので、ぜひ新たなネバ―ランドを体感したいなと思います。

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はミュージカルのZINEを制作してみたいと思っています。
Twitter:@kahonfuu

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

暑い。観たいものがいくつか(いくつも)観れない8月。観れるものは全力で楽しみたい。

まずは、EPOCH MAN新作公演『我ら宇宙の塵』。トップスでLEDとかパペットとか、どんな作品になるんだろって今からわくわくしています。またキャストがね、いいんですよ。みんなで小沢道成ワールドを楽しみましょう。

そして、公演はもう始まってるけど、範宙遊泳『バナナの花は食べられる』。岸田國士戯曲賞受賞作の再演ですね。前回は観られていないので、楽しみにしています。あと、コンプソンズ#11「愛について語るときは静かにしてくれ」も外せないですね。

そしてそして、神谷圭介さんのソロプロジェクト画餅が登場するテアトロコント vol.63は必見です。画餅おもしろいですよね画餅。30分×3組というテアトロコントのフォーマットはとても観やすく、新たな出会いもあり、そして面白い。サイコーじゃないかと思っています。みなさんもぜひに。
 
最後に、どうしても見ることができない公演もご紹介しておきます。
(まだ諦めてはいませんが…)

岡田利規さんの新作なのに…。チェルフィッチュ新作『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』
演劇ターンを読んで気になりました、おもち食べ放題『赤を張って、ブルー』
前回公演も見逃して次こそはと思っていた、南極ゴジラ『怪奇星キューのすべて』

そう、8月1週目がどうしても予定が入れられないのです…!